豪州でオスプレイ墜落:ダウンウォッシュで操縦不能か 米軍紙報道 - 沖縄タイムズ(2018年5月12日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/250713
https://megalodon.jp/2018-0512-1047-38/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/250713

【平安名純代・米国特約記者】米海兵隊機関紙マリンコー・タイムズは10日、昨年8月にオーストラリア東部の沖合で米軍普天間飛行場所属のMV22オスプレイ1機が墜落し、乗員3人が死亡した事故原因について、エンジンの排気熱によるダウンウォッシュ(下方への風圧)を受け、操縦不能となっていた可能性が高いと報じた。識者は、オスプレイの操縦の複雑さが事故につながった要因と指摘した。
同紙は、墜落時の状況を検証した事故調査委員会メンバーの証言として、墜落機は揚陸艦への着艦を試みた際に発生したダウンウォッシュがローターに流れ込んだため出力を失い、操縦士が体勢を立て直せないまま揚陸艦接触した後、海中に墜落したなどと報じた。
また、緊急時の脱出訓練を徹底していれば、死亡した3人は助かっていた可能性があるなどとの事故調査委の証言も伝えた。
米国防分析研究所(IDA)元主任分析官でオスプレイの専門家レックス・リボロ氏は、本紙の取材に対し「オスプレイは、着陸時に他機種の約2倍に相当する吹き下ろし気流が発生し、周囲のものを吹き飛ばしたり着陸を困難にする。他機種より複雑な操縦技術を要するため、小さな操縦ミスが大事故につながる」と指摘した。
墜落機は、米豪の合同軍事演習「タリスマン・セーバー」に参加していた。

浜岡原発アンケ 南海トラフ地震、割れる意見 臨時情報時 - 毎日新聞(2018年5月12日)

https://mainichi.jp/articles/20180512/k00/00m/040/192000c
http://archive.today/2018.05.12-013444/https://mainichi.jp/articles/20180512/k00/00m/040/192000c


南海トラフ地震の臨時情報が出された際の中部電力浜岡原発静岡県御前崎市)の対応について、半径30キロ圏の11市町のうち2首長が毎日新聞のアンケートに対し「停止すべきだ」と回答した。4首長は「国が判断すべきだ」「対応基準を作るべきだ」と、国などの関与を求めた。【松岡大地、島田信幸】
国は昨年、地震予知を前提とした大規模地震対策特別措置法に基づく防災体制を見直した。これまでは首相が警戒宣言を発令し住民避難などを実施することになっていたが、予知は困難だとして、地震発生の可能性が高まった時などに気象庁が臨時情報を出すことになった。中部電は警戒宣言で浜岡原発を停止する方針だったが、臨時情報発表時の対応を決めていない。
政府要請で浜岡原発が完全停止してから14日で7年となるのに合わせ、川勝平太静岡県知事と11市町の首長に臨時情報が出た際、浜岡原発を停止すべきかなどを選択式で尋ねた。「臨時情報が出た時点で停止すべきだ」と答えたのは松井三郎・掛川市長と原田英之・袋井市長。原田市長は「原発が稼働している状況では、南海トラフ沿いで異常な現象が観測され、調査が開始された段階で直ちに停止すべきだ」とした。
「国が判断すべきだ」としたのは渡部修・磐田市長と田村典彦・吉田町長。「その他」を選び「国や県が判断すべきだ」「国が基準を作るべきだ」と国などの関与を求めたのは染谷絹代・島田市長と杉本基久雄・牧之原市長。その他の6人の首長は「現時点で検討する課題ではない」などと明確な態度を示さなかった。
国は今後、臨時情報発表時のガイドラインを示す方針だが、「個別具体の原発の対応の指針までは出せないのでは」(内閣府防災担当)としている。
国は一定の基準を
東海大学海洋研究所の織原義明特任准教授(地域防災)の話 相対的に地震の可能性が高まった時は、(再稼働していたら)浜岡原発を停止する方向でいかないと地域でうまくいかないだろう。臨時情報が出た際に、原発周辺の自治体が避難勧告を出したり、住民が避難したりする必要があるかなども国は一定の基準を示すべきだと考える。

臨時情報を巡る知事・市長の回答内容

静岡県  川勝平太  その他(そもそも再稼働を考え得る状況にない)

御前崎市 柳沢重夫  現時点で判断できない

牧之原市 杉本基久雄 その他(国は具体的な対応基準を作るべきだ)

菊川市  太田順一  その他(現時点で検討する課題ではない)

掛川市  松井三郎  停止すべきだ

島田市  染谷絹代  その他(国ないし道県が判断すべきだ)

焼津市  中野弘道  その他(仮定の話での設問のため)

藤枝市  北村正平  その他(現状で再稼働はあり得ない)

磐田市  渡部修   国が判断すべきだ

袋井市  原田英之  停止すべきだ

吉田町  田村典彦  国が判断すべきだ

森町   太田康雄  現時点で判断できない

※敬称略。回答内容は選択式で、「その他」のカッコ内は回答理由の一部

「18歳成人」若者保護策は 親同意なく契約可能 消費者被害拡大懸念 - 東京新聞(2018年5月12日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201805/CK2018051202000132.html
https://megalodon.jp/2018-0512-0911-46/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201805/CK2018051202000132.html


成人年齢を十八歳に引き下げる民法改正案が十一日、衆院法務委員会で実質審議入りした。政府は二〇二二年四月の施行を目指す。成立すれば、一八七六年に二十歳と定められてから初の引き下げとなる。この日の審議では、悪質契約からの若者層保護に議論が集中した。今後は飲酒、喫煙などで維持される「二十歳」との二重基準による混乱回避策なども議論となる。 (大杉はるか)
上川陽子法相は、引き下げの意義を「十八、十九歳を経済取引で大人と扱う。自覚を高めて積極的に活躍いただき、社会に活力をもたらす」と説明した。
引き下げられれば、十八、十九歳も親の同意なくローンや売買契約が可能になる。与野党議員のほとんどが、社会経験の乏しい若者層を狙った悪質契約による消費者被害拡大の懸念を指摘。政府は対応策として、不安や恋愛感情を利用した契約の取り消しを可能とする消費者契約法改正案を提出し、同日の衆院本会議で審議入りした。
成人式のタイミングも議論になった。これまで多くの自治体が開催してきたのは一月第二月曜日の「成人の日」前後だが、十八歳に引き下げられれば、受験期と重なる。
離婚後の養育費支払期限も取り上げられた。最高裁家庭局長は「養育費支払いは、子が未成熟で自立が期待できない場合に判断される」と、成人になったことは支払い打ち切りの理由にならないことを説明した。
一方、「二十歳」が維持された規定もある。飲酒、喫煙、ギャンブルや猟銃所持は、現行通り二十歳未満禁止。国民年金保険料の支払いも現行通り二十歳からになる。小児慢性特定疾病の医療費助成、児童養護施設など保護施設入所や自立支援も、必要なら二十歳になるまで受けられる。混乱防止のための周知方法が必要になる。

宮本みち子・放送大名誉教授 生活築くまでの支援必要
成人年齢の18歳への引き下げが適当と判断した法制審議会で委員を務めた宮本みち子・放送大名誉教授(社会学)=写真=に、意義や今後の課題などを聞いた。
先進国では早くから、若者の社会への参画政策を進めてきた。若者が発言できる機会が極めて少ない日本にとって、成人年齢を引き下げることを若者の参画推進の転機とするべきだ。高校教育が義務教育に近い現状では、十八歳で進路が分かれることが多い。十八歳は、選挙権など社会の一員としての資格を与える良い時期だ。
ただ、成人としての責任を与えるのと暮らしの保障がセットでなければならない。安定した生活基盤を築くまでの支援は必要だ。児童福祉法の対象は十八歳までに限られる。児童養護施設なども実態に合わせて対応しつつあるが、法的保障はなく、不安定だ。若者の実態に合わせた保護の手を緩めてはならない。 (聞き手・柚木まり)

PKO新任務「戦闘リスク」 政府認識、安保法成立直後 - 東京新聞(2018年5月12日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201805/CK2018051202000143.html
https://megalodon.jp/2018-0512-0913-11/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201805/CK2018051202000143.html


安全保障関連法が成立した直後の二〇一五年九月に開かれた防衛相直轄の会議用資料に、安保法に基づく国連平和維持活動(PKO)の新任務により「戦闘を伴う任務遂行」の可能性が高まると記されていたことが、十一日の国会審議で明らかになった。政府は、新任務で隊員の武器使用の権限を拡大しても「リスクは下がる」(安倍晋三首相)と説明してきたが、内部では隊員の戦闘関与を懸念していた。
国会で示されたのは、陸上自衛隊陸上幕僚監部が一五年九月二十八日付で作成した「陸幕施策等説明」という文書。防衛相直轄の「部隊長会同」という会議の資料として使われた。会議は安保法が成立した同十九日の直後に開かれた。
PKOの新任務による戦闘関与の懸念は「将官教育の方向性」という表題のページに記され「他国と連携した戦闘を伴う任務遂行、現場指揮官による説明責任遂行の可能性増大」と指摘した。
実際、一六年七月には陸自南スーダンPKO派遣部隊が活動していた首都ジュバで、政府軍と反政府勢力の武力衝突が発生し、多数の死者が出た。陸自隊員に犠牲者はなかったが、その後に公表された当時のPKO日報には「戦闘が生起」と記されていた。
それでも、政府は同十一月、ジュバ市内の情勢が落ち着いたとして、邦人らを暴徒から武器を使って救援する新任務「駆け付け警護」を派遣部隊に付与。当時の稲田朋美防衛相は「万一の備えとして必要な任務と権限を与える。部隊にとってもリスク低減につながる」と強調した。
文書の内容と、政府の説明との矛盾は他にもある。
文書は安保法に基づく集団的自衛権の行使について「米軍、他国軍との共同作戦、武力行使を伴う任務遂行の可能性増大」と指摘。一方、首相は集団的自衛権の行使容認は限定的だと強調し「米軍の戦争に巻き込まれることはない」と明言している。
文書は共産党の請求を受け、防衛省が提供。十一日の衆院外務委員会で、同党の穀田恵二氏が公表した。 (新開浩)

「3人産め」発言 女性蔑視の本音見えた - 東京新聞(2018年5月12日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018051202000166.html
https://megalodon.jp/2018-0512-0914-27/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018051202000166.html

またか。その思いを強くする非常識な発言が与党議員から出た。子どもを産まない女性に対し配慮に欠ける。政府・与党関係者による女性への差別発言は後を絶たない。本音だからだろう。

あきれた発言である。

自民党加藤寛治衆院議員が会合で「(結婚する女性に)三人以上の子どもを産み育ててほしい。これが世のため人のためになる」と語った。
最後は発言を撤回したものの、その非常識さを自覚しているようには見えない。女性蔑視と言わざるを得ない。
出産するかどうかは個人の自由である。親の介護で余裕がなかったり、夫婦で働かないと生活が成り立たなかったりと、不妊以外にも産みたくても産めない事情を抱えている人はいる。こうした事情に無自覚な発言が言われる側を傷つけることを自覚すべきだ。
安倍政権は少子化対策の目標に「希望出生率一・八」を掲げる。若い世代の望む結婚や子どもの人数を実現するとこの出生率になるからだが、政府が数値目標を設定することは出産を国民に強いているととられかねない。それだけに政府・与党関係者の発言には慎重さが求められる。
女性への政府・与党関係者の差別発言は枚挙にいとまがない。二〇〇三年に森喜朗元首相が「子どもを一人もつくらない女性の面倒を税金でみなさいというのはおかしい」と発言、〇七年に当時の柳沢伯夫厚生労働相が女性を「産む機械」と発言して批判された。
今回の財務省前次官のセクハラ問題では、麻生太郎財務相が十一日の国会でもセクハラを認めていないととれる発言を繰り返した。この問題では与党議員からも心無い発言がされている。女性に対する差別的な意識は変わっていないのではないか。
加藤氏は「少子化は一番大事な問題」と発言の動機を説明した。ならば求められているのは、女性が働きやすい職場環境の整備や、男性も子育てするための長時間労働の見直し、育児しながら働いても生活ができる賃金の実現などを通して、産みたい人が安心して産める社会の実現のはずだ。
加藤氏は「結婚しなければ、人様の子どもの税金で老人ホームに行くことになる」とも言った。年金、医療、介護などの社会保障は支え合いの制度だということを理解していない発言である。
国会議員として取り組むべき課題は何か、再考してもらいたい。

(政界地獄耳)自民にこそセクハラパワハラ講習必要 - 日刊スポーツ(2018年5月12日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201805120000274.html
http://archive.today/2018.05.12-005105/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201805120000274.html

★10日、自民党清和会(首相・安倍晋三の出身派閥・細田派)の会合で、長崎2区、当選3回の衆院議員・加藤寛治があいさつし「私は結婚式では3人以上の子どもを産んでほしいという話をすることにしている。世の中には努力しても子どもに恵まれない方もおられる。そういう方に無理を言うのは酷だが、そういう方々のために3人以上が必要なんですよ、と。これがいうなれば世のため人のためになる」(会場から「そうだ」の声)。
★続けて「結婚しなければ子どもは生まれないわけですから、ひと様の子どもの税金で老人ホームに行くことになりますよ」と諭していると話した。パワハラやセクハラでピリピリしているのは決して言葉狩りをしているのではない。正しいと信じて疑わず、政治家の立場として今まで同様のあいさつをしてみんなに喜ばれていると思っていることが、まったく違う聞こえ方になっているということを理解しない人に価値観の変化を求めているのだ。
★発言を問われると加藤は「少子化対策は一番の、我が国にとっては大事な問題。ただ、それだけです」と答えた。正直な気持ちだろう。その後、党が火消しに動く。同日夕、「誤解を与えたことに対しおわびします。決して女性を蔑視している訳ではありませんが、そのようにとられてしまうような発言でありましたので撤回します」とした。そこで問われるのは加藤が事の本質を理解したか、セクハラ・パワハラが政局の焦点の1つになっていながら、こんな話をして、清和会では「そうだ」の合いの手も入ったことを考えれば、党内は相変わらず、同派の元文科相下村博文財務省事務次官福田淳一からセクハラ被害を受けたテレビ朝日記者の行為を「端(はな)から週刊誌に提供する意図で隠し録音をしていたのではないかという疑念が生じた」との発言と同根だ。無論、自民党全体がこの下村発言や一連の副総理兼財務相麻生太郎の「セクハラという罪はない」発言を批判していないので、女性議員を含めすべて同根と言っていい。セクハラ・パワハラ講習が自民党にも必要だ。(K)※敬称略

松井久子 映画監督:あの人に迫る - 中日新聞(2018年5月11日)

http://www.chunichi.co.jp/article/feature/anohito/list/CK2018051102000236.html
https://megalodon.jp/2018-0512-0926-28/www.chunichi.co.jp/article/feature/anohito/list/CK2018051102000236.html

◆自分たちの憲法、興味湧く報道を
国会で憲法改正の議論が活発になってきた。だが、そこに私たち国民の意見はあるだろうか。憲法は本来、私たち国民のものであり、国と権力者を縛るものであるはず。「今の改憲案は破壊の『壊憲』です」。映画「不思議なクニの憲法」の松井久子監督(71)の言葉には、憲法を軽んじる政治家への怒りがにじむ。
−映画「不思議なクニの憲法」が公開されたのが、二〇一六年五月。以来、リニューアル版、一八年版と作り続けてきました。
オリジナル版は、憲法に書いてあるのはこういうことだよ、という教科書的なものでした。上映会はすごい熱気でしたが一六年七月の参院選後、しぼんでしまった。その理由は、九条の矛盾を避けた内容だからじゃないかと思ったんです。そこで参院選後、九条の問題も自衛隊も沖縄問題も逃げずに議論しよう、と投げ掛けるものにしました。
その後、安倍晋三首相が九条一項二項はそのままに自衛隊を明記すると言い出しました。改憲問題では、どうしても九条が話題になるけど、その先に必ず(非常事態の際に政府の権限を強化する)緊急事態条項を付けてくる。それが通れば、国家が国民を管理できるようになる。個人の尊厳や自由がなくなってしまう。だから、安倍首相の改憲案に反対する国民運動にしなきゃという危機感で一八年版を作りました。

自民党改憲案になぜ反対するのですか。

今の憲法にもたくさん問題点はあります。例えば「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し−(二四条)」とありますが、性的少数者(LGBT)の人たちはどうなのとかね。古くなっているところはあると思います。
ただ、今の九条を突破口にしようというやり方は、本当に変えるべきところを変えようという議論になっていない。しかも国民が消極的です。ちゃんと議論しようというのなら、私は構わない。でも今のままなら、半分の人しか投票しなかったとしても、さらにその半分、つまり四分の一の人が賛成したら変えられちゃうわけじゃない。
その危機感をこの世を去っていく者として、訴えたい。若い人たちに、いいんですか、と。国民の側から「変えたい」といううねりが出てきているわけじゃない。だから、今は変える時じゃないと思います。

−確かに、改憲に向けた国民の関心が高まっているという気がしません。

みんな日々の生活に精いっぱいで、頑張って生きているわけ。仕事をして子育てをして、さらに憲法を勉強しろ、関心を持てというのは酷です。そういう教育もされてこなかった。政治的なことは考えない、という雰囲気が浸透していると思います。
私は「不思議なクニ−」という題名を付けたときから、この国はどうして人々が政治的なことを話すのはタブーなんでしょうと思っていました。政治的なことはまさに自分の生活、人生に直結しているのに。
感じるのは、今の社会がいかに大事なことを考える余裕をなくしているかということです。何か疑問を持ったら生きづらくなるから、疑問を持たないようにしている。寄らば大樹の陰というか、受け入れる方が楽ですからね。そういう意味で「不思議な国ですね」というのは、主権者である国民への問い掛けなんです。

−根本の問題はどこにあるのでしょうか。

それは教育ですよ。小中高、特に中学生ですね。中学の義務教育の時にしっかりと憲法が教えられるべきだと思います。だけれども、政権を取っている自民党がこの憲法を愛せないわけだから。変えたいわけだから。それは無理ですよね。学校でも憲法のことをしっかり自分たちのものだって教えることができない。

−今の政治で問題だと思うことは。

安倍政権が成功しているのは、国家が国民を管理するということです。本当に民主主義がちゃんと機能していたら、政治家はすごく大変なんですよ。だから、政治は私たちに任せなさい。あんたたち国民は私についてこい。そういう国家が国民を管理する社会にしよう、というのが自民党政権の狙いです。
国民は政府のごまかした言い方にだまされていると思うんです。憲法を変えたい政治家たちは、あんなに頑張っている自衛隊憲法違反だと言われるのは気の毒だと言う。そう言いながら、上手に思い込ませていくというのが、積み重なっている気がします。

憲法問題について、私たちメディアは役割を果たせているでしょうか。

森友学園加計学園をめぐる問題は、報道で世論が動きました。メディアの力で人々の心が動くことが証明されたのです。ただその陰で、国は着々と改憲の準備を進めている気がします。気が付いたら自由が奪われていた、言論が縛られていた、そういうことにならないように、メディアは忘れずに報じてほしいと思います。
憲法はわれわれ国民のものです。でも、憲法問題になると難しい言葉が出てきて「考えたくない」となってしまう。そんな人たちに対して、憲法問題が「あっ、自分のことなんだ」と思えるような報道の仕方があると思うのよね。
特にテレビは、芸能人の不倫報道に時間を費やして、スケープゴートにして袋だたきにする土壌をつくっているわけですよ。メディアの罪です。そういう人たちが、憲法という国民全体で考えなくちゃならないことに対して、興味を持つようにつくる知恵がない。新聞も憲法問題を堅い言葉でしか語らない。政治もメディアも劣化していると思います。

−私たち国民は、関心を持って憲法に向き合うことはできるでしょうか

韓国の朴槿恵(パククネ)政権が倒れたとき、人々が集まって百万人単位でデモをする姿を見てうらやましかったんです。映画でも触れましたが、ソウル大に行って南基生教授にそう伝えたら「日本には食卓やファッション、そういうところに平和を大切にする国民性がある。それが脅かされるようになったら、絶対に黙っていない。だから僕は安心しています」と言われました。
政治運動でワーッと動くことはないかもしれないけど、日本人は生活平和主義という意味においてちゃんと動く。そう言われたのはうれしかったですね。希望が見えた気がしました。
それに国民投票ではこの人に入れてやってくれ、という選挙のような義理がない。改憲案に賛成か反対かを黙って投票すればいいので、その意識を持って判断できる。そこで私のできることは何だろうと思ってこの映画を作りました。
「不思議なクニ−」の本編の最後に出てくる人たちの名前は、映画のために寄付してくださった方です。こういうこぢんまりしたことでも、人に伝えることはできると思います。憲法って難しいから考えたくないという人を一人でも減らしたい。そして、私たちの生活と人生のことであることに、気付いてくれる人を一人でも増やしたいですね。

<まつい・ひさこ> 1946年、東京都出身。早稲田大文学部演劇科卒業。フリーライターを経て、85年にエッセン・コミュニケーションズを設立、プロデューサーとしてドラマやドキュメンタリーなど多くのテレビ番組を企画・制作した。98年に映画「ユキエ」で監督デビュー。同作と、認知症となった義母の介護と家族の再生を描いた第2作「折り梅」(2002年公開)は、全国で自主上映会が開かれている。
16年5月に初公開された「不思議なクニの憲法」は、「何を怖れる フェミニズムを生きた女たち」(15年公開)に続く2作目のドキュメンタリー作品となる。著書に「松井久子の生きる力(ソリストの思考術)」(六耀社)など。

◆あなたに伝えたい
今の九条を突破口にしようというやり方は、本当に変えるべきところを変えようという議論になっていない。

◆インタビューを終えて
松井監督にとって憲法とは「自由を保障するもの」だという。九条ばかりが話題になる憲法の根幹には、男女平等や表現の自由基本的人権の尊重がちりばめられている。憲法に疎い自分こそが、憲法を軽んじているようで恥ずかしくなった。
映画の中で「憲法は理想の書」という言葉が出てくる。戦争のない自由で平等な社会の実現をうたう前文の最後には「日本国民は(中略)この崇高な理想と目的を達成することを誓う」とある。人類普遍の永遠の理想を掲げているのだ。そのことを胸に刻んだ上で、議論の中身を見極めたいと思う。 (住彩子)

湯川秀樹博士「原子力は猛獣」「もはや制御できず」 京大日記公開、科学者としての危機感示す - 毎日新聞(2018年5月12日)

https://mainichi.jp/articles/20180512/ddm/012/040/169000c
http://archive.today/2018.05.12-001820/https://mainichi.jp/articles/20180512/ddm/012/040/169000c

京都大は11日、日本人初のノーベル賞を受賞した物理学者の湯川秀樹(1907〜81年)が、太平洋・ビキニ環礁付近での米国の水爆実験について書いた54年の日記を公開した。ビキニ事件を機に平和運動へ身を投じた過程がうかがえる資料だ。湯川と交流があり、日記の判読に携わった小沼通二・慶応大名誉教授(87)は「ビキニ事件から湯川は“行動の人”になった。核兵器が依然残る現代、私たちにどう考え、行動すべきか示唆する」と話す。
54年3月1日に行われたビキニ水爆実験は広島型原爆の約1000倍の規模。マグロ漁船「第五福竜丸」などが被ばくし、乗組員の久保山愛吉さんが死亡した。湯川は翌55年、「ラッセル・アインシュタイン宣言」に署名するなど核廃絶運動に傾倒していった。
日記は淡々とし、心情は直接書かれていない。しかし、ビキニ事件後に全国を講演し、1000人規模の市民が集まったことなどを記述。湯川が社会へ働きかける様子が分かる。湯川がその「原点」とするのが、54年3月30日付毎日新聞朝刊1面の寄稿「原子力と人類の転機」だ。日記でも掲載に触れている。
寄稿は約2300字。この中で湯川は「二十世紀の人類は自分の手でとんでもない野獣をつくり出した」と書き起こし、原子力を「野獣」「猛獣」と形容。「もはや飼主の手でも完全に制御できない狂暴性を発揮しはじめた」と危機感を示し、脅威に対する世界の連帯を訴えた。そして「私は科学者であるがゆえに、原子力対人類という問題をより真剣に考えるべき責任を感ずる」と決意を述べた。
小沼名誉教授は大学院時代、湯川、ノーベル賞を受賞した朝永振一郎と知り合った。核軍縮などを議論する「パグウォッシュ会議」などでともに活動し、湯川らは「行動する科学者」のモデルだった。
想定を超える原子力の危険性は、2011年の福島第1原発事故でも示された。小沼名誉教授は「日記の公開を今後の日本、世界を考えるきっかけにしてほしい」と期待する。

日記は京都大基礎物理学研究所・湯川記念館史料室が公開。記述内容は同史料室のホームページで見られる。【菅沼舞、阿部周一】

暴言3佐訓戒処分 文民統制の不全を憂慮 - 琉球新報(2018年5月12日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-717010.html
http://archive.today/2018.05.12-002144/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-717010.html

政治が軍事に優越するというシビリアンコントロール文民統制)が機能していないことがはっきりした。
防衛省は、小西洋之参院議員に「国益を損なう」などと暴言を繰り返した統合幕僚監部の30代の3等空佐を、内部規定に基づく訓戒処分とした。訓戒は「軽微な違反」と規定される。
国民に選ばれた国会議員に対する暴言は、民主主義の根幹である文民統制を揺るがす。安倍政権が文民統制の重みを理解しているのか大いに疑問である。
防衛省によると、3佐は国会議事堂周辺をジョギング中に遭遇した小西氏に、自衛官と明かした上で「あなたがやっていることは日本の国益を損なうようなことじゃないか」「国のために働け」「ばかなのか」「気持ち悪い」などの暴言を浴びせた。
文民統制は軍が政治力を持った戦前の反省から生まれた。何が国益なのかは、実力組織を統制する側の文民が判断することであって、統制される側の自衛隊幹部が判断するものではない。3佐の発言は私的な立場のものであり「文民統制を否定するものではない」という防衛省の見解は詭弁(きべん)にすぎない。
防衛省は、小西氏が主張した「おまえは国民の敵だ」との発言は3佐が否定したため認定しなかった。「国民の敵」という言葉は、青年将校が引き起こした五・一五事件の檄(げき)文に使われ、その後の軍の暴走を招いた。防衛省はもっと時間をかけて調査すべきだった。
統制する側にも問題がある。小野寺五典防衛相は、3佐の暴言が発覚した際「若い隊員で国民の一人でもあるので、当然思うことはあるだろう」と述べた。統制する側に、その自覚がないことを示す発言であり危うい。
安倍政権下で自衛隊が組織と権限を拡充していることを憂慮する。
2018年度の防衛費は、前年度比1・3%増の5兆1911億円。6年連続増で過去最高となった。中国の軍拡や海洋進出、北朝鮮のミサイル発射などを理由に、他の経費が軒並みマイナスとなる中で突出している。
導入を決めた3種類のミサイルの射程は約500〜900キロ。沖縄にも配備されているF15戦闘機に搭載される。那覇からでも中国の上海に達する。さらに北朝鮮の制空権内に接近することなくミサイル発射台などを狙える。日本海上空から北朝鮮弾道ミサイル発射台をたたく敵基地攻撃が可能な射程を持つ。専守防衛に反する。
15年に成立した改正防衛省設置法によって、防衛官僚(文官)が自衛官(武官)より優位だった「文官統制」制度を全廃し、武官の政治的な発言権が強化された。
自衛隊イラク派遣部隊の日報も隠蔽(いんぺい)した。戦前のように軍が暴走する事態を繰り返してはならない。

<金口木舌>県民を愛していますか - 琉球新報(2018年5月12日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-717009.html
http://archive.today/2018.05.12-002346/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-717009.html

聖書に「あなたの隣人を、あなた自身のように愛しなさい」という一節がある。ネラー海兵隊総司令官は「良き隣人となるために、引き続き最善を尽くす」と強調した
▼国や組織に忠誠を尽くす、部下思いで知られるネラー氏。米海兵隊を思いやるように、米軍機の事故に不安を抱く県民に配慮し、寄り添っているのだろうか。到底そうは思えない
▼先日、会見で米軍普天間飛行場の安全な運用をいかに確保するかについて問われたネラー氏は「周辺住民がレーザーを照射したり、飛行経路で凧(たこ)や風船を飛ばしたりしなければ、(安全に)役立つ」と発言した
▼飛行中のレーザー照射は危険な行為で、過去に逮捕者が出ている。一方、風船や凧は、米軍機の運用を航空法から除外する航空法特例法の施行令でも規制の対象外だ。相次ぐ事故で県民を危険にさらしながら、市民の抗議行動をやり玉に挙げるのは良き隣人のやることではない
▼1980年代、アフガニスタンのゲリラはソ連軍の侵攻に抵抗するため、米国製のスティンガーミサイルでソ連軍機を撃墜した。世界最強の米軍の機体はレーザーや、風船で墜落するほど脆弱(ぜいじゃく)なのか
▼過去の墜落や部品落下などの事故は米軍自身のミスなどによるものだ。再発防止や原因究明を徹底しないまま飛行を再開しておいて、隣人に責任転嫁するのは傍若無人が過ぎないか。