暴言3佐訓戒処分 文民統制の不全を憂慮 - 琉球新報(2018年5月12日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-717010.html
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政治が軍事に優越するというシビリアンコントロール文民統制)が機能していないことがはっきりした。
防衛省は、小西洋之参院議員に「国益を損なう」などと暴言を繰り返した統合幕僚監部の30代の3等空佐を、内部規定に基づく訓戒処分とした。訓戒は「軽微な違反」と規定される。
国民に選ばれた国会議員に対する暴言は、民主主義の根幹である文民統制を揺るがす。安倍政権が文民統制の重みを理解しているのか大いに疑問である。
防衛省によると、3佐は国会議事堂周辺をジョギング中に遭遇した小西氏に、自衛官と明かした上で「あなたがやっていることは日本の国益を損なうようなことじゃないか」「国のために働け」「ばかなのか」「気持ち悪い」などの暴言を浴びせた。
文民統制は軍が政治力を持った戦前の反省から生まれた。何が国益なのかは、実力組織を統制する側の文民が判断することであって、統制される側の自衛隊幹部が判断するものではない。3佐の発言は私的な立場のものであり「文民統制を否定するものではない」という防衛省の見解は詭弁(きべん)にすぎない。
防衛省は、小西氏が主張した「おまえは国民の敵だ」との発言は3佐が否定したため認定しなかった。「国民の敵」という言葉は、青年将校が引き起こした五・一五事件の檄(げき)文に使われ、その後の軍の暴走を招いた。防衛省はもっと時間をかけて調査すべきだった。
統制する側にも問題がある。小野寺五典防衛相は、3佐の暴言が発覚した際「若い隊員で国民の一人でもあるので、当然思うことはあるだろう」と述べた。統制する側に、その自覚がないことを示す発言であり危うい。
安倍政権下で自衛隊が組織と権限を拡充していることを憂慮する。
2018年度の防衛費は、前年度比1・3%増の5兆1911億円。6年連続増で過去最高となった。中国の軍拡や海洋進出、北朝鮮のミサイル発射などを理由に、他の経費が軒並みマイナスとなる中で突出している。
導入を決めた3種類のミサイルの射程は約500〜900キロ。沖縄にも配備されているF15戦闘機に搭載される。那覇からでも中国の上海に達する。さらに北朝鮮の制空権内に接近することなくミサイル発射台などを狙える。日本海上空から北朝鮮弾道ミサイル発射台をたたく敵基地攻撃が可能な射程を持つ。専守防衛に反する。
15年に成立した改正防衛省設置法によって、防衛官僚(文官)が自衛官(武官)より優位だった「文官統制」制度を全廃し、武官の政治的な発言権が強化された。
自衛隊イラク派遣部隊の日報も隠蔽(いんぺい)した。戦前のように軍が暴走する事態を繰り返してはならない。