財務省が森友学園側に口裏合わせ求めた疑い 国有地売却問題で - NHKニュース(2018年4月4日)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180404/k10011390911000.html

森友学園に国有地がごみの撤去費用などとして8億円余り値引きされて売却された問題で、去年2月、財務省が学園側に口裏合わせを求めていた疑いが出てきました。当時、国会で財務省は野党側から「実際に大量のごみの撤去を確認したのか」などと追及されていましたが、そのさなか財務省の職員が学園側に対し「トラックを何千台も使ってごみを撤去したと言ってほしい」などと、うその説明をするよう求めていたことが関係者への取材でわかりました。大阪地検特捜部はこうしたやり取りを把握していて詳しい経緯を捜査しています。

大阪・豊中市の国有地がごみの撤去費用などとして鑑定価格よりおよそ8億2000万円値引きされて森友学園に売却された問題は、去年2月に明らかになり、大阪地検特捜部は背任容疑での告発を受理し捜査を進めています。

当時、国会では「値引き額の算定の根拠があいまいだ」などと批判が相次ぎ、去年2月17日の衆議院予算委員会財務省は「8億円かけてごみを撤去するとなればダンプカー4000台分ぐらいになる。実際に撤去されたか確認したのか」などと野党側から追及されていました。

その3日後の去年2月20日、国有地を管轄する財務省理財局の職員が学園側に電話し、「トラックを何千台も使ってごみを撤去したと言ってほしい」などと、うその説明をするよう求めていたことが関係者への取材で新たにわかりました。

関係者によりますと学園側は「事実と違うのでその説明はできない」などと断ったということですが、こうした一連のやり取りについて職員はメールで財務省内の複数の関係者に報告していたということです。

関係者によりますと、特捜部はこうした学園側とのやり取りや省内のメールの存在を把握しているということで、特捜部は学園側にうその説明をするよう求めた詳しい経緯を捜査しています。

値引きの根拠と財務省の答弁
森友学園への国有地売却をめぐる問題は去年2月8日に発覚しました。

大阪・豊中市の国有地について財務省近畿財務局がおととし6月、鑑定価格の9億5600万円からごみの撤去費用などとしておよそ8億2000万円を値引きし、1億3400万円で学園側に売却していたことが明らかになりました。

国有地の地中に埋まったごみの撤去費用は通常、不動産鑑定士など民間の専門業者が見積もりを行いますが、財務省は小学校の開校時期が迫っていたなどとして国土交通省大阪航空局に見積もりを依頼する異例の対応を取りました。

大阪航空局は調査の結果として、くいを打つ場所は深さ9.9メートル、校舎などを建設する場所は深さ3.8メートルまでごみがあると推計しごみの撤去費用を8億2000万円と算定しました。

しかし、国会では値引き額の算定の根拠があいまいで不当な値引きではないかなどという質問が相次ぎました。

去年2月17日の衆議院予算委員会では、野党側が「8億円分のごみを撤去すると1万2200立方メートルの残土を搬出することになり、それをやるとダンプカー4000台分ぐらいになる。4000台のダンプカーが行き交うことになるが、財務省は実際に工事をやったかどうか確認したのか」などと質問しました。

また、財務省の職員が学園側に電話したとされる去年2月20日の衆議院予算委員会では、野党側が「8億円分の廃棄物を撤去する土の量を計算すると、およそ2万7000立方メートルになる。これを搬出するとなると10トントラック3460台分が必要になる。こういう作業が実際にやられているかどうか財務省は確認したのか」と質問しました。

これに対し佐川前理財局長は「学校を建設するにあたって必要な廃棄物の撤去を適切に行ったというのは近畿財務局で確認している」とか、「地下の埋設物については土地を売却したあとに学園側が適切に撤去したというふうに聞いているが、売却後なので具体的な撤去の状況は把握していない」などと答弁していました。

森友学園をめぐってはその後、決裁文書の改ざんが明らかになりましたが、その時期について財務省は、学園側への電話と同じ時期の去年2月下旬から始まったと説明しています。

値引き額の算定方法について会計検査院は去年11月、「十分な根拠を確認できず資料が保存されていないため十分な検証が行えない」などとする検査結果を国会に提出していました。

国交省 路上に機密文書 廃棄の途上、大阪航空局など - 毎日新聞(2018年4月4日)


https://mainichi.jp/articles/20180404/k00/00e/040/311000c
http://archive.today/2018.04.04-065924/https://mainichi.jp/articles/20180404/k00/00e/040/311000c

国土交通省は4日、大阪航空局気象庁大阪管区気象台の廃棄書類約840枚が大阪市内の路上に散乱していたと発表した。国交省は散乱文書を回収したが、個人情報が書かれた機密性の高い内部文書も含まれていた。
国交省によると、文書は航空局や気象台で作成された危機管理マニュアルなど。個人情報が記載された連絡網も含まれていた。
2日午後0時20分ごろ、大阪市北区西天満1の交差点で、通行人から「路上に書類が落ちている」と連絡があった。廃棄書類を処理する民間業者が車で運搬中に落とした可能性がある。外部に流出していないか調べる。
機密性のある文書は裁断などが必要だが、一般ごみとして捨てられており、経緯を調査している。国交省は「文書の散乱は誠に残念で、再発防止につとめる」との談話を出した。【山口知】

福島県警 首相演説でおにぎり配布 衆院選、市議任意聴取 - 毎日新聞(2018年4月3日)


https://mainichi.jp/articles/20180403/k00/00e/040/212000c
http://archive.today/2018.04.04-082812/https://mainichi.jp/articles/20180403/k00/00e/040/212000c

昨年10月の衆院選公示日、福島市自民党候補や応援に駆け付けた安倍晋三首相が演説した際、集まった有権者におにぎりを配ったとして、福島県警公選法違反容疑で宍戸一照福島市議を任意で事情聴取したことが3日、関係者への取材で分かった。
宍戸市議は取材に事実関係を認め「陣営の関係者のために準備して、余った分を良かったらもらってくださいと声掛けしただけだ」と話している。安倍首相は亀岡偉民衆院議員の応援のため、衆院選の第一声となる演説をした。(共同)

首相演説でおにぎり配布:福島市議を任意聴取

県内の政権支持率が低下 文書改ざん問題が影響 - 福島テレビ(2018年4月2日)

http://www.fnn-news.com/localtime/fukushima/detail.html?id=FNNL00061226
http://archive.today/2018.04.02-110315/http://www.fnn-news.com/localtime/fukushima/detail.html?id=FNNL00061226

福島テレビ福島民報社が共同で世論調査
国有地売却をめぐり、財務省が決裁文書を改ざんしていた問題が影響し、福島県内の安倍政権に対する支持率は低下した。
福島テレビ福島民報社は、この週末に、電話による世論調査を行った。
この中で、佐川前国税庁長官の証人喚問について聞いたところ、財務省の決裁文書改ざん問題については、「全く解明されていない」との回答が74.9%にのぼった。
これが影響して、安倍内閣の支持率は24.4%となり、過去5年間で最も低くなった。
これについて内堀雅雄知事は、「公文書の書き換えはあってはならない」としたうえで、県として公文書の管理を適正に行うとした。

歯止めづくり進まず 軍事研究指針整備 3割のみ - 東京新聞(2018年4月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201804/CK2018040402000140.html
https://megalodon.jp/2018-0404-0913-23/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201804/CK2018040402000140.html

日本学術会議の山極寿一(じゅいち)会長(京都大学長)は三日、大学などが軍事関連予算で行う基礎研究の是非について、「全国で統一した指針がほしい」と記者会見で述べ、各大学などが共有できる審査指針モデルを作る意欲を示した。
学術会議は同日、防衛省が助成する軍事応用可能な基礎研究の公募に関する各大学などへのアンケート結果を東京都内の総会で公表。応募時の審査指針や手続きを整備しているのは三割強にとどまり、約二割は指針などの整備に向け「検討中」と回答した。
山極会長は「指針や手続きを作ろうとしている機関が多い」と評価。ただ、大学側が独自に指針を策定するのに苦労する例も多いことから、統一の審査指針モデル作りを考えているという。指針がまちまちだと学生や研究者が他大学へ移りにくくなったり、留学生の受け入れに支障が出たりする危険性もあるという。
アンケートは、防衛省の公募制度を「政府による介入が著しく、問題が多い」とした昨年三月の学術会議声明への対応を把握する目的で実施。声明は、助成を受けようとする研究の適切性を審査するよう大学などに求めている。回答では、防衛省公募も含めた軍事と科学研究の在り方について、基本原則が「ある」としたのは約44%、「ない」は約38%だった。
過去の戦争協力への反省から学術会議は「軍事研究は行わない」という声明を掲げてきた。琉球大や、山極会長が学長を務める京都大が軍事研究をしない基本方針を公表。関西大や法政大も、防衛省公募に応募しない方針を示している。
調査は今年二〜三月、全国の主な大学や研究機関を対象に実施。回答したのは約74%に当たる百三十五の国公立大、私立大、研究所など。個別の大学名などは明らかにしていない。
今後、回答の自由記述も踏まえて分析し、九月のシンポジウムで公表する。

◆各大学 個別対応に苦慮
<解説> 日本学術会議は昨年三月に出した軍事研究に関する新たな声明で、「学術の健全な発展という見地から問題が多い」として、各研究機関に審査制度を設けることで、安易な応募に歯止めをかけるよう求めた。
しかしこの日の報告では、審査制度を設けたのは三割にとどまり、二割は「検討中」。検討中の七割が「具体的な見通しがたっていない」と回答するなど、声明が出てもなお、具体的な対応に苦慮している姿が浮かび上がった。
執行部や評議会などで新声明への対応を話し合った研究機関は七割を超え、一割は独自の検討組織も立ち上げるなど、三成美保副会長は「声明が一定のインパクトを与えたことは明らか」と評価する。
一方、声明では、軍事研究への応募の是非までは踏み込んでおらず、「審査をクリアすれば、軍事研究に応募できる」(前会長の大西隆豊橋技術科学大学長)と解釈する大学もあり、受け止めも一様ではない。あいまいな書きぶりが歯止めとなる仕組みづくりを躊躇(ちゅうちょ)させている面もある。
軍事研究禁止をホームページで公表した京都大学長でもある山極寿一会長は「大学ごとに(軍事研究の)ガイドラインを作るより、ある程度統一したものが学術会議としてできるといいとは思う。今後、報告書などを精査し考えていきたい」と意欲を語る。学術会議として、さらに踏み込んだ軍事研究禁止のガイドラインを打ち出せるか否か、執行部の力量が問われている。 (望月衣塑子)

子ども食堂拡大 2200カ所超 「地域を支えるインフラに」 - 東京新聞(2018年4月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201804/CK2018040402000160.html
https://megalodon.jp/2018-0404-0914-19/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201804/CK2018040402000160.html

地域の子どもに食事や居場所を提供する「子ども食堂」の運営者らでつくる「こども食堂安心・安全向上委員会」は三日、食堂数が全国で二千二百カ所を超えたとの調査結果を発表した。代表の湯浅誠・法政大学教授は「予想を超える広がり。特別な人が特別なことをしている場所ではなく、支え合いの地域づくりに欠かせないインフラになり始めている」とみている。 (石川修巳)
委員会によると、全国規模の調査は初めて。一〜三月、各地の社会福祉協議会などに問い合わせた結果、全国に二千二百八十六カ所あり、東京都の三百三十五カ所が最多で、大阪府二百十九カ所、神奈川県百六十九カ所の順。
その他の首都圏などでは、埼玉県八十三カ所、千葉県六十二カ所、群馬県二十六カ所、栃木県二十三カ所、茨城県十九カ所、静岡県四十カ所。
貧困家庭の子どもへの支援だけでなく、地域の居場所としての多様な役割が広がりを後押ししているという。東京都豊島区で四カ所の食堂を運営し、記者会見に参加した栗林知絵子さんは「食事づくりなら、片付けなら−と、子どものために何かしたいみんなの気持ちがあれば、子ども食堂はつくりやすい」と語る。
湯浅さんは「全国に小学校は約二万校あるが、こども食堂はまだ十分の一。地域の理解を得て定着するためにも、万一への備えが欠かせない」と指摘。けがや食中毒などに備えるボランティア行事用保険などへの加入を食堂運営者に呼び掛けており、一千万円を目標にインターネットで保険費用の寄付募集も始めた。
子ども食堂は二〇一二年、東京都大田区で近藤博子さんが開いた「気まぐれ八百屋だんだん こども食堂」が始まりとされる。

非核の叫び 若者に託す「ノーモア・ヒバクシャ」 船橋・岩佐さん「訴え続けて」:千葉 - 東京新聞(2018年4月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201804/CK2018040402000152.html
https://megalodon.jp/2018-0404-0915-53/www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201804/CK2018040402000152.html

ノーベル平和賞受賞団体「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長(35)が一月、被爆地の長崎を訪問した。基調講演で発した言葉「ノーモア・ヒバクシャ」は、三十六年前に被爆者として初めて国連本部で演説した故山口仙二さん=二〇一三年に八十二歳で死去=が叫んだものだった。山口さんと共に歩んだ船橋市の岩佐幹三さん(89)は、当時を思い起こしつつ明日の平和を目指す若者らに期待する。
「ノーモア・ウォー、ノーモア・ヒバクシャ!」。一九八二年六月、第二回の国連軍縮特別総会。長崎原爆に遭い日本の反核運動を引っ張った山口さんは、顔や体にケロイドが残る自身の写真を見せ、声を振り絞った。同行した岩佐さんは、会場でその様子を目に焼き付けた。「仙ちゃんは身をもって体験を語った。堂々とした(核保有国への)警告だった」
広島で被爆した岩佐さんは当時、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の活動をけん引。山口さんの草稿に「具体的な体験を盛り込んだらどうか」などと提案しながら議論を積み重ね、約十分間の演説原稿を仕上げた。
フィンさんは長崎市での講演で「痛みに満ちた経験と思い出を、繰り返し語り続けた。被爆者なくして核兵器禁止条約は生まれなかった」と、長年の努力をたたえた。岩佐さんは「仙ちゃんの思いを、若い人に受け止めてもらえた気がした」と感極まった。
米トランプ政権は、核兵器の使用条件を緩めるとともに「使える核兵器」と称される小型核の開発を盛り込んだ、新たな戦略指針を公表。北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威にさらされる日本政府は歓迎する。一方で米朝首脳会談が五月末までに開かれる運びとなったが、実現しても非核化につながるかは不透明だ。
「核保有国や核の傘の下にある国の人々へ、訴え続けてほしい。これからが勝負だ」。岩佐さんは、世界の若者に後を託している。

放送法4条「政治的公平」撤廃焦点 - 東京新聞(2018年4月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201804/CK2018040402000137.html
https://megalodon.jp/2018-0404-0917-16/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201804/CK2018040402000137.html


政府の規制改革推進会議は四日のワーキンググループ(WG)で、放送制度改革について有識者らによる議論を続ける。注目されるのは、放送局に政治的公平などを義務付けた放送法四条の存廃。政府の方針案は撤廃を打ち出しているが、放送界や専門家は、偏向報道の増加や、党派色の強い局の登場を懸念する声が強い。
方針案は四条撤廃に加え民間放送とインターネット通信で異なる規制・制度の一本化、番組などのソフト部門と放送設備などのハード部門の分離徹底が柱。
主導しているのは安倍晋三首相だ。首相は今年二月に開かれた政府の未来投資会議で「通信と放送の垣根がなくなる中で、放送事業のあり方の大胆な見直しも必要だ」と明言。この直後の規制改革推進会議WGから、放送を巡る規制改革の議論がスタートした。
今回の方針案も、政権に批判的な報道への不満や、持論を展開しやすいネット番組への期待があるとの見方が強い。首相は二〇一四年十二月の衆院選前、TBS番組に出演し、政権に厳しい声が相次ぐ街頭インタビュー映像に「(一般の)声が反映されていない」と反発したことがある。
一五年四月には自民党が、官邸批判をしたテレビ朝日関係者らを党会合に呼び、「政権からの圧力」と批判を受けた。このとき根拠にしたのが「報道は事実をまげない」などとした放送法四条。これを含めて、四条は、政治家が放送業界に圧力をかける際に乱用されることがあった。
しかし、放送法に詳しい上智大の音好宏(おとよしひろ)教授(メディア論)は「四条を撤廃して自由にすることで多様な言論を担保できるかと言えば、『悪貨が良貨を駆逐する』危険性がある」と警鐘を鳴らす。テレビ放送などに政治的な公正・中立を求める「フェアネス・ドクトリン(公平原則)」が一九八七年に廃止された米国に関して「右派のニュースが非常に増え(社会の)分断が進んだ」とも分析する。
野田聖子総務相は三月二十二日の衆院総務委員会で、四条が撤廃された場合「公序良俗を害する番組や事実に基づかない報道が増加する可能性がある」と懸念。自民党岸田文雄政調会長も「慎重に取り組むべきだ」とブレーキをかける。
民放在京キー局五社の経営トップは、それぞれ反対を表明。民放出身の杉尾秀哉参院議員(民進)は「四条は放送局にとって政治や公権力の介入を許す口実にもなりうるが、介入から放送の自立性を守る盾にもなる」と指摘している。 (村上一樹)

陸自の日報管理 「隠蔽体質」を一掃せよ - 東京新聞(2018年4月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018040402000164.html
https://megalodon.jp/2018-0404-0918-13/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018040402000164.html

イラクに派遣された陸上自衛隊の日報が見つかってから防衛相への報告までに二カ月半以上かかった。当初、見つけられなかったことも問題だ。文民統制をも危うくしかねない重大な事態である。
当時の防衛相、事務次官陸上幕僚長が辞任するに至った南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報隠蔽(いんぺい)を、重大事と受け止めていなかったのではないか。ずさんな文書管理である。
二〇〇四〜〇六年に人道復興支援でイラクに派遣されていた陸自部隊の活動に関する日報が防衛省内に保管されていた。昨年二月、当時の稲田朋美防衛相が国会で「残っていないことを確認した」と答弁していたものだ。
問題は二つ。第一は当初なぜ見つけられなかったのか、である。
稲田氏の答弁当時、南スーダン派遣部隊が作成した日報の開示遅れが隠蔽と批判され、国会ではイラク派遣部隊についても日報の所在を確認する質問が出ていた。
陸自自衛隊の予算や活動を決める国会の質問を軽視し、十分な調査をしなかったのではないか。それは、国会の文民統制シビリアンコントロール)を危うくする規律違反にほかならない。
第二は自衛隊を統括する防衛相への報告の遅れだ。陸上幕僚監部の衛生部と陸自の研究本部は今年一月、日報の存在を陸幕総務課に報告したが、統合幕僚監部には約一カ月後の二月二十七日、小野寺五典防衛相にはさらに一カ月後の三月三十一日の報告だった。
なぜ、これほどまでに遅れたのか。小野寺氏は確認作業に時間がかかったと説明したが、それで済むという話ではあるまい。
イラクへは自衛隊初の「戦時派遣」である。宿営地にロケット弾が着弾したことも明らかになっている。自衛隊の派遣や活動継続が妥当だったかどうかは、現地で実際に何があったのかを明らかにした上で、検証することが必要だ。
南スーダンの日報では陸幕や内局の幹部による組織的隠蔽が認定された。イラクの日報が当初、見つからなかったり、発見の報告が遅れた背景に、隠蔽を許す組織の体質があるのだとしたら根が深く、繰り返されかねない。
世界でも有数の火力を備える実力組織である自衛隊の活動は、可能な限り情報を開示し、国民の理解や支持を得ることが前提だ。昨年来の日報をめぐる問題は国民の信頼を著しく損ねた。隠蔽が再発しかねない組織の体質を一掃しなければ、信頼回復は望めまい。

イラク日報 陸自の隠蔽体質またも - 朝日新聞デジタル(2018年4月4日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13435132.html
http://archive.today/2018.04.03-223901/https://www.asahi.com/articles/DA3S13435132.html

防衛省が国会答弁で存在しないとしてきた陸上自衛隊イラク派遣時の日報が見つかった。2004〜06年の延べ376日分、1万4千ページに上る。
「ない」はずの公文書が一転、確認されたのは、昨年の南スーダンPKO日報問題と同じ構図だ。当時の稲田防衛相が辞任し、再発防止を誓った小野寺防衛相に代わっても、防衛省自衛隊の隠蔽(いんぺい)体質は変わっていないと言わざるをえない。
陸自の初めての「戦地」派遣という重要な記録である。もとより保存するのが当然であり、「見つからない」で済まされる問題ではなかった。
03年のイラク戦争開戦から15年。米英やオランダの政府は戦後に独立調査委員会を設け、「大義なき戦争」の実態を徹底検証した。ところが日本政府は検証らしい検証もなく安全保障関連法を成立させ、自衛隊の海外活動の幅を大きく広げた。
見つかった日報は、現場の生の動きを伝えるもので、検証の基礎となりうる。防衛省は今月半ばまでに、資料要求した国会議員に開示するとしているが、「黒塗りばかり」というのは許されない。検証に資するよう最大限の開示を強く求める。
そもそも、なぜイラク日報は「ない」とされてきたのか。PKO日報と同様、派遣に疑問を抱かせるような情勢の厳しさを隠そうとしたのではないか。そんな疑いが拭えない。
当時の小泉政権は「自衛隊が活動する地域は非戦闘地域」という強引な論理で陸自部隊の派遣に踏み切った。しかしロケット弾などによる宿営地攻撃や、仕掛け爆弾による車両被害に遭遇したのが現実だ。
今回、PKO日報問題を受けた文書の確認調査がなければ、イラク日報の「発見」はなかったかもしれないと思うと、防衛省自衛隊の抱える問題の深さに暗然とする。
陸上幕僚監部は1月中に文書の存在を把握したが、防衛相への報告は3月末。これほど時間がかかったのは一体なぜか。シビリアンコントロール文民統制)の不全は明らかだ。
国会を軽視し、独断で政策を進めようとする安倍政権の体質にも通じるものだ。森友問題での財務省の決裁文書改ざんの真相は不明のまま。行政への信頼を根底から掘り崩す危機的な事態である。
イラク派遣に限らず、公の記録はあらゆる政策決定の検証に欠かせない。ずさんな管理は国会だけでなく、現在の、そして将来の国民への背信でもある。そのことを忘れてはならない。

(余録)「市ケ谷台へ帰ると… - 毎日新聞(2018年4月4日)

https://mainichi.jp/articles/20180404/ddm/001/070/177000c
http://archive.today/2018.04.03-223130/https://mainichi.jp/articles/20180404/ddm/001/070/177000c

市ケ谷台へ帰ると前庭に火焔(かえん)ともうもうたる煙が立ち上がっているではないか」。終戦時、陸軍省人事局に勤務していた軍人の回想である。8月14日から始まった「機密書類焼却」は16日まで続いたという。
先の軍人は自分の部屋に駆け込んで驚いた。「自分の机を見ると、引き出しの中は完全に空っぽで何も残っていない。同期生会関係書類も勿論(もちろん)である。怒鳴ってみたが後の祭り。私の留守中に勝手に火中に放り込んでしまったのだ」
「機密」であろうとなかろうと、一切合財(いっさいがっさい)灰にしたのだ。当時、陸軍省参謀本部は東京・市谷本村町にあって市ケ谷台と呼ばれたが、こちらはその跡地に建つ現代の「市ケ谷台」−−防衛省の記録文書をめぐるすったもんだである。
国会で「ない」と説明されていた陸自イラク派遣時の日報が出てきたと突然、防衛相が発表した。そう聞けば、元防衛相の辞任をもたらした南スーダンの国連平和維持活動の日報隠蔽(いんぺい)とよく似た事の運びにあきれる方もおられよう。
また同省は日米防衛協力をめぐる開示文書の改ざん疑惑に対し、類似文書が内部説明用に2通あったのを認めた。文書については、なかったりあったり、同じ文書が何種もあったりと、まるでからくり屋敷のような市ケ谷台上である。
1年以上も国政を振り回してきた財務省防衛省の公文書の扱いである。終戦時の各省の文書焼却の背景には閣議決定があった。では今日の各省のでたらめな文書管理の同時発生、背後にあるのは何だろう。

(政界地獄耳)改ざんも隠ぺいも税金の無駄遣い - 日刊スポーツ(2018年4月4日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201804040000137.html
http://archive.today/2018.04.04-012201/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201804040000137.html

森友学園の問題は、たかだか8億円の値引きの話。国会が1年以上かけて議論するようなものではない。国会には、もっと大切で議論すべき問題が山積みする。こういう声をよく耳にする。また、この8億円のいきさつについて調べるため、国会議員の給料や調査費、官僚の資料作成など、8億円以上の費用がかかっているとの指摘もある。なるほど、そういう視点の当て方もあるのかと、考えさせられる。
★だが、いずれも国民の税金だ。さらに、前国税庁長官が就任後、記者会見も開かず、雲隠れし続けた。税金の無駄遣いの議論で言うならば、前国税庁長官も同罪だろう。公文書改ざんは、他に議論すべき大事なことの後回しにされるべき事柄ではない。民主主義の根幹を揺るがし、決済後の文章が改ざんされる事態は歴史の修正であり、民主主義国家がやることではない。それをエリート中のエリート財務省の官僚が、組織ぐるみで行っている実態の解明よりも、やるべきこととは何か。その審議内容すら改ざんされる恐れがあるのに、先に進めろということだろうか。また、趣旨が同じだから問題ないという議論にも、くみしかねる。
★政治家の関与があろうがなかろうが、改ざんすることを良しとする文化が中央官庁にあることに、重大な不安を覚えている。まだ開示請求や国会での議論の最中に、公文書や資料が紛失した、または破棄したという。ほとぼりが冷めたころ、「見つかりました」と言いだす中央官庁の“手口”にもあきれる。最近も同様の事態が続くが、これも文書改ざんと同罪ではないか。大臣がぶら下がりで「おわび」を言う程度で、国会での審議や追及の時間の無駄はどうなるのか。8億円の追及が無駄と言うのなら、文書隠しも相当の無駄だと思うが。うっかりや勘違いが横行する国会は、中央官庁になめられっぱなしだ。(K)※敬称略

学校の制服 「らしさ」を押しつけず - 東京新聞(2018年4月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018040402000163.html
https://megalodon.jp/2018-0404-0919-16/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018040402000163.html

学生服のデザインや選択から男女差をなくす試みが始まっている。制服が「女らしさ」「男らしさ」を押しつけていないか。性的少数者への配慮も求められる中で考えたい。
今春開校した千葉県柏市立「柏の葉中学」の制服が話題になった。「性別に関係なく選べる」からだ。上着はブレザーでみな同じ。スラックスかスカート、リボンかネクタイ、それぞれの組み合わせを自由に選べる。
開校前に学校が保護者と子どもを交え、制服は必要か、必要ないかという点から議論した。性同一性障害など性的少数者への配慮も必要だとの意見が出て、性別を問わないスタイルに決まった。
大手学生服メーカーによると、以前から女子用にスラックスも選択肢としている学校はあるが、防寒や防犯を目的にした例が多い。柏の葉中のように男女差のない「ジェンダーフリー」を前面に出した例は珍しいという。
背景にあるのは、性的少数者への関心の高まりだ。文部科学省が二〇一五年に全国教職員向けに出した通知では、LGBTなど性的マイノリティーの生徒に対し、学校側が支援するよう求めている。制服はその典型だろう。
東京都の世田谷区教育委員会は区立中学校の標準服(制服)を性別に関係なく選べるスタイルにできないか、検討を始めた。
考えてみたい。家ではズボンでもスカートでも自由に選べる。なのに制服はなぜ男子の詰め襟、女子のスカートに代表される、性別で決められたスタイルがあるのか。学生服は「学生らしさ」を演出する。その上に、「男らしさ」「女らしさ」までも、生徒に強いることにならないか。
学校には、いろんな条件や背景を持つ生徒が通う。スカートや詰め襟の着用に抵抗を感じる生徒はいる。国際化も進み外国人の生徒もいる。宗教上の理由で肌を露出したくない生徒もいる。だれにとっても一日の多くの時間を過ごす場が、苦痛にならないよう配慮しなくてはならない。
統一感など利点も強調される制服だが、そもそも必要なのかという疑問の声もある。「着たい人だけ着る、着たい時だけ着る」と生徒に任せている学校もある。
制服をイタリアの高級ブランドのデザインに変更して物議をかもした公立小があった。柏の葉中のように、だれもが制服を自由に選べる、そういう自由さこそが、校風になってもいいのではないか。

「自由、正義、平等」父の夢 道半ば キング牧師暗殺50年 長男に聞く - 東京新聞(2018年4月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201804/CK2018040402000141.html
https://megalodon.jp/2018-0404-0920-13/www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201804/CK2018040402000141.html

【ニューヨーク=赤川肇】米国の公民権運動指導者マーチン・ルーサー・キング牧師の暗殺から四日で五十年になる。トランプ米政権下で人種や宗教、性などを巡る差別が助長される中、長男で人権活動家のマーチン・ルーサー・キング三世(60)は本紙の電話取材に「トランプ大統領は人権問題に関心があるようには見えない」と懸念。「人類の自由、正義、平等という父の『夢』は道半ば。もし生きていたら気掛かりだろう」と語った。
キング氏は二〇一七年一月、就任直前のトランプ氏と面会した。多くの州で、マイノリティーや高齢者、貧困層が運転免許証など顔写真付きの公的身分証を持たないため、投票できない現状を打破する改革案を提案。トランプ氏は「いい考えだ」と賛同し、米ホワイトハウスで再びキング氏と話し合う考えを示したが、そのまま立ち消えになったという。
キング氏は、人種や性差による不寛容さが今も残っていると指摘し、「不運にも時として大統領の言葉が差別をあおっている」とトランプ氏を批判。キング牧師の「私たちは兄弟姉妹として、共に生きるすべを学ばなければならない。さもなくば、共に愚か者として滅びるだろう」との名言を引用し、非暴力による問題解決を呼び掛けた。
フロリダ州で起きた二月の銃乱射事件後のデモでは、キング氏の長女ヨランダさん(9つ)が「私には夢がある。銃のない世界だ」と演説した。米国では五十年の節目に合わせ、キング牧師の功績をしのぶ行事が各地で開かれている。

キング牧師> 1929年、米ジョージア州アトランタで牧師の長男として生まれる。黒人差別に対する非暴力主義の抵抗を提唱し、人種差別や性差別を禁じた公民権法や投票権法の制定に貢献。64年、ノーベル平和賞を史上最年少(当時)で受賞。68年、清掃作業員らのストライキ支援でテネシー州メンフィスの宿泊施設に滞在中、バルコニーで白人脱獄囚に射殺された。

キング牧師長男 一問一答 非暴力運動・高校生の銃反対 心強い - 東京新聞(2018年4月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201804/CK2018040402000149.html
https://megalodon.jp/2018-0404-0921-08/www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201804/CK2018040402000149.html

「私には夢がある」と人種融和を訴えた名演説で知られる米国のキング牧師の暗殺から4日で50年。長男で人権活動家のキング3世(60)は、差別や国際社会での孤立をいとわないトランプ米大統領を「時計の針を巻き戻そうとしている」と非難する一方、そうした大統領への反発が、銃規制強化や性差別の根絶を訴える市民運動を盛り上げている側面を指摘した。本紙との主な一問一答は次の通り。 (ニューヨーク・赤川肇)

−暗殺当時十歳だった。

 「遊説やデモに同行したこともあったが、父を社会の重要人物として初めて認識したのは葬儀。時の大統領候補ら政界や芸能界の大物がいた。それから父の言葉を学ぶようになった」

「私たち四人の兄弟姉妹にとって、家では仲間のような存在だった。冷蔵庫の上から父の腕に飛び降りて遊んだり、水泳を教えてくれたり。小学二年のころ、投獄された父を他の子供たちから『おまえのオヤジは常習犯だ』と冷やかされ、大泣きする私に母は『世の中を良くするために獄舎に行くのよ』と言った。翌日から誇らしい気持ちで通学できたのを覚えている」

キング牧師の「夢」は実現に近づいたのか。

「明らかに未達成だ。父は貧困、人種差別、軍国主義・暴力という三悪の根絶を唱えた。しかし、経済大国で何千万もの人々が貧困にあえぎ、大統領が人種差別をあおり、暴力は地域から国家間レベルまで甘受するのに慣れてしまうほど、あちこちにあふれている」
「一方、父や母が誇らしく思うであろう前進もある。カリフォルニア州で三月、丸腰の黒人が白人警官に撃たれた事件では、黒人による抗議運動が白人にも広がっている。どんな不正義も正義への脅威だ。非暴力運動の盛り上がりが心強い。性暴力やセクハラを告発する『#MeToo』運動もそう。こうした動きは、トランプ氏の就任後に目立ちだしたのではないか」

−二月のフロリダ州の高校銃乱射事件を受け、全米で高校生らが銃規制の強化を訴えて立ち上がった。

「最も高く評価したい動きだ。高校生主導の運動は一九六三年の公民権運動以来で、連邦議会まで変えようとしていると思う」

−銃乱射事件後のデモでは、キング牧師の孫娘で、あなたの長女ヨランダさん(9つ)も「私には夢がある。銃のない世界だ」と演説した。

「実は娘にとって新しい問題ではなかった。二年前、家族でオバマ大統領(当時)に会った際、娘には事前に『大統領への質問を考えておいて』と伝えていた。彼女がオバマ氏に尋ねたのは『銃問題にどう向き合うつもりですか』だった」
「娘だけではない。子どもたちが自分たちや次世代の安全のために理想を持ち、何かしなければと感じている。父と母の遺志は受け継がれているのだ」

最高裁 定年後の再雇用 賃金75%減は違法 - 毎日新聞(2018年3月30日)

https://mainichi.jp/articles/20180331/k00/00m/040/059000c
http://archive.today/2018.03.30-135555/https://mainichi.jp/articles/20180331/k00/00m/040/059000c

「制度趣旨に反する」 福岡高裁判決が確定
定年後の再雇用契約を巡り、賃金の75%カットを提示され退職した元従業員の女性が、勤めていた食品会社に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(木沢克之裁判長)が原告、会社双方の上告を不受理とする決定を出した。定年後の極端な労働条件悪化は、65歳までの継続雇用を義務付けた高年齢者雇用安定法の趣旨に反するとして、会社に慰謝料100万円を支払うよう命じた2審・福岡高裁判決が確定した。決定は1日付。
2013年施行の改正高年齢者雇用安定法は、企業に希望者全員を65歳まで雇用するよう義務付けたが、多くの企業は賃金の安い非正規契約で雇用を継続している。女性側の弁護士によると再雇用後の賃金引き下げを不法行為とする判決が確定するのは初めてとみられる。再雇用した労働者の賃金を大幅に引き下げている企業や業界が対応を迫られる可能性がある。
昨年9月の福岡高裁判決によると、北九州市の食品会社で正社員として働いていた山本真由美さん(63)は15年3月末に60歳で定年を迎えた際、パート勤務で定年前の賃金の約25%とする労働条件を提示された。山本さんはフルタイム勤務を希望したため再雇用契約は合意に至らず、退職を余儀なくされた。
1審・福岡地裁小倉支部判決(16年10月)は、「賃金の引き下げは業務が減少したためで合理性がある」とする会社側の主張を支持。これに対し、福岡高裁は再雇用の際の労働条件について「定年の前後で継続性・連続性があることが原則」との解釈を示したうえで、収入が75%も減る労働条件の提示は「継続雇用制度の導入の趣旨に反し、違法性がある」と判断した。
一方、山本さんが損害賠償とは別に求めていた従業員としての地位確認については、1、2審とも「再雇用に至っていないので契約上の権利を有していない」として退けた。
被告側弁護士は取材に「労働条件の提示に正当性があると主張したが不法行為と認定されたことは残念な結果」とコメントした。【宮城裕也】

労働問題に詳しい花垣存彦(ありひこ)弁護士(第二東京弁護士会)の話 定年後の再雇用の労働条件を考える上で大変重要であり画期的な判決だ。高年齢者雇用安定法は労働条件の取り決めに具体的な決まりがない。不当に賃金を引き下げれば訴訟で負けるという例となり社会的影響は少なくない。「定年前との継続性・連続性が一定程度確保される」というキーワードが今後、労働条件を取り決める際の一つの指針になることが期待される。

改正高年齢者雇用安定法
60歳だった男性の厚生年金の支給開始年齢が、2013年4月から段階的に引き上げられたのに伴い、同月施行された。賃金も年金ももらえなくなる人が出るのを防ぐため、65歳未満の定年を定めている企業に対し、(1)定年の引き上げ(2)継続雇用制度の導入(3)定年制の廃止−−のいずれかの措置を講じるよう義務付けた。