https://ryukyushimpo.jp/column/entry-3149906.html
傷ついた心を癒やしてくれるはずの時が壁となって立ちはだかる。旧優生保護法下で不妊手術を強いられた被害者らの訴えに対し、国は不法行為から20年が過ぎれば原告の請求権が消える除斥期間を主張し、補償の責務を逃れようとしている
▼「時の壁」を据えて民の訴えを阻む国の行為は過去にもあった。県民も原告に参加したハンセン病国賠訴訟だ。ここでも国は除斥期間を論じ、救済枠を狭めようとした▼その後の家族訴訟でも国は同様の主張をしたが、いずれも裁判所は認めなかった。時を経ても被害は等しく救済する。当然だろう
▼強制隔離政策に苦しんできた元患者家族に対する補償金の請求期限は今年11月に迫るが、実際の請求件数は想定の3割にとどまる。根強く残る偏見や差別を恐れ名乗り出られないのだろう。申請期限の延長が国会に提案される予定だ
▼旧優生保護法の被害者も同じ思いのはず。最高裁で審理が始まった。そもそも、重大な人権侵害に時効は成立するのか。救済できるのは時間ではなく支援する社会でしかない。