【政界地獄耳】地方自治に逆行する自治法改正の裏に衰退国家の準備 - 日刊スポーツ(2024年5月24日)

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★後半国会は衆院政治改革特別委員会での規正法改正ばかりが報じられるが、23日は法案提出者の自民党政治刷新本部座長・鈴木馨祐が自民案の見直しについて、各党の意見を踏まえ「真摯(しんし)に対応したい」と早速腰砕けの発言。お粗末さを露呈しているが、その裏で今週から実質審議入りした衆院総務委員会の地方自治法改正案も注目だ。同改正案は感染症のまん延や大規模災害など国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生した場合に、個別の法律に規定がなくても国が自治体に必要な指示を行うという、そもそも地方自治に逆行する議論。地方の時代でもなければ道州制議論を掲げる党にとってもなぜ今か。
能登半島地震で石川県が効率的な行政判断や対応ができなかったことなどで復興が遅れていることなどに関連するのだろうか。地方制度調査会の答申を受ける形で3月1日に閣議決定していた。ただ自治体などからの反発も大きい。17日、杉並区、東京都青梅市、北海道名寄市福島県南相馬市、同県北塩原村新潟県小千谷市群馬県東吾妻町山梨県忍野村静岡県南伊豆町など9市区町村でつくる「自治スクラム支援会議」は、国の指示権限が強まれば、自治体が災害時に国の指示がないから動けないという体質に変わってしまうなどの懸念を総務大臣に要望書として提出した。同会議は災害時に相互援助協定などを結び協力体制を整えてきたが、いずれも東日本大震災の教訓をもとに自治体が協力体制を構築した結果だ。
★いまさらの中央集権体制の復活。21日には参考人質疑が行われ、立憲民主党が推薦した中央大学副学長の礒崎初仁教授は「憲法が定める地方自治の本旨は自己決定権を有し、国は必要な範囲を超えて介入してはならないという原理」と危惧を示した。政界関係者が言う。「背景には今後の人口減と地域の過疎化による情報共有の困難さや鉄道などのインフラの集約化があるのだろう。衰退国家の準備が始まったということだ」と指摘する。これも自民党政治の結果か。(K)※敬称略