辺野古訴訟和解 政府は誠意ある対話を - 毎日新聞(2016年3月5日)

http://mainichi.jp/articles/20160305/ddm/005/070/033000c
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米軍普天間飛行場沖縄県名護市辺野古への移設計画をめぐり国が県を訴えた代執行訴訟で、双方は裁判所が示した和解案を受け入れ、再度、協議の場につくことになった。
ただ、国が辺野古移設を推進する方針は変わっていない。話し合いが不調に終われば、再び裁判に持ち込まれる可能性が高い。
裁判所は、代替施設建設を前提とした「根本案」と、工事中止を含む「暫定案」という二つの和解案を示していた。今回、成立した和解の内容は、暫定案を修正したものだ。
具体的には、代執行訴訟を含む裁判を国と県それぞれが取り下げ、国は工事を直ちに中止する。国は代執行ではなく、地方自治法に基づく是正の指示の手続きを取り、その後、県による国地方係争処理委員会への審査申し出、県による是正指示の取り消し訴訟の提起へと進む。
双方は、判決の確定まで円満解決に向けた協議を行い、確定後は直ちに判決に従う−−という内容だ。
県の主張をより多く取り入れており、国は当初、否定的だった。
安倍晋三首相は和解案を受け入れた理由を「国と県が延々と訴訟合戦を繰り広げている関係が続けば、こう着状態となり、普天間が固定化されかねない」と説明した。
政権が和解に応じた背景の一つには、選挙があると見られる。6月の県議選、夏の参院選を控え、国と県の対立がこれ以上、激しくなれば選挙に悪影響を与えかねない。
代執行訴訟での敗訴リスクを回避する判断が働いた可能性もある。暫定案が代執行以外の手続きを求めたため、裁判所が代執行訴訟に批判的との見方が出ていたからだ。
和解案受け入れについて、翁長雄志(おながたけし)知事は「和解が成立したことは大変意義のあることだ。それぞれが説明責任を果たしながら問題の解決に導いていくことが大切だ」と語った。
公表された和解勧告文の中で、裁判所は「沖縄対政府という対立の構図」に触れ、「どちらがいい悪いという問題以前に双方ともに反省すべきだ」と注文している。
特に国と地方が対等・協力の関係になることが期待された改正地方自治法の精神に反すると指摘し、本来は沖縄を含めオールジャパンで最善の解決策を合意して米国に協力を求めるべきだとの考えを示した。
国と県は昨夏にも1カ月間、工事を中断して集中協議をしたことがある。だが安全保障関連法案の審議と重なるのを避けるための政治休戦の面が強く、議論は深まらなかった。
今度こそ政府は県の疑問に誠実に答え、解決策を見いだしてほしい。再協議を、参院選までの時間稼ぎの形式的なものにしてはならない。