(余録)NHK連続テレビ小説「虎に翼」の主人公のモデルは… - 毎日新聞(2024年4月22日)

https://mainichi.jp/articles/20240422/ddm/001/070/125000c

NHK連続テレビ小説「虎に翼」の主人公のモデルは、三淵嘉子(みぶち・よしこ)さんだ。1940年に女性で初めて弁護士になった。納得できない時の口癖「はて?」はドラマの創作のようだが、自身が味わった悔しさを書き残している。
法律を勉強していることを知人に話すと驚きあきれられ「他人には言うまいと決心した」。民法の講義で女性の地位の惨めさを知り「じだんだ踏んだ」。法律家になるための試験会場で、裁判官募集の書類に「帝国男子に限る」とあった。同じ試験を受けているのに、と憤りを覚えた。「男女差別に対する怒りの開眼」だったという。
先人の業績を調べた佐賀千恵美弁護士の著作「日本初の女性法律家たち」に紹介されている。戦前は、女性に参政権がなく、結婚すれば「法的無能力者」として夫に財産を管理されていた。
戦後、三淵さんは裁判官に就いた。新潟家庭裁判所で初の女性裁判所長になった。定年退官後、「男性と同じように生きてきた」と振り返っている。男女平等をうたう現憲法下でも、長らく男性優位の社会が続いてきた。
女性法律家の誕生から80年以上を経て、今年、渕上玲子(ふちがみ・れいこ)さんが日本弁護士連合会の会長に就任した。法曹三者(ほうそうさんしゃ)と呼ばれる裁判官、検察官、弁護士のそれぞれの組織で、女性がトップに就くのは初めてだ。
昨年3月時点で、全国の弁護士に占める女性の割合は20%にとどまる。裁判官や検察官も3割に満たない。多様性ある社会の実現に向け、人権を守る法律家が果たすべき役割は大きい。