裁判官がSNS発信で懲戒?最高裁大法廷が判断へ…岡口基一判事「裁判を受ける国民の皆さんにとって悲劇」 - FNNプライムオンライン(2018年9月10日)

https://www.fnn.jp/posts/2018091019352610KTV
http://archive.today/2018.09.11-005039/https://www.fnn.jp/posts/2018091019352610KTV

裁判官を懲戒すべきかどうかが審理される「分限裁判」。
その当事者となっている東京高裁の岡口基一裁判官が、初めてテレビカメラの前で心境を語りました。

【東京高裁・岡口基一裁判官】
「私、東京高裁の長官室に呼ばれまして、まず『ツイッターをやめなさい』と言われまして、『ツイッターやめないんだったら分限裁判にかけて裁判官をクビにしてやる』と言われたんですね。なぜ、そこまで当局(長官)がやるのかというのも、私自身分かりかねているところです」

岡口基一裁判官(52)。

東京高裁の現役裁判官で、約15年間、実名でSNSなどを通じて情報発信し、行政や裁判所に批判的ともいえる内容から水着姿を自分で撮った写真まで投稿してきた「異色」の裁判官です。

法律関係の本も多数執筆している岡口裁判官は、弁護士の間でも有名だといいます。

【亀石倫子弁護士】
「若手弁護士で岡口裁判官のことを知らない人はほとんどいない。それくらいすごく有名で、かつ、優秀な裁判官だと私たちは思っている。岡口裁判官がツイッターをされていて、ブリーフ姿で自撮り(画像)をアップしていることもよく知られているんですけど、そのことと裁判官としての能力は分けて考えている弁護士が多いと思う」

今回問題とされているのが、別の裁判官が担当した民事裁判のニュースを紹介する投稿。

公園に放置されていた犬の所有権が元の飼い主と拾った人のどちらにあるかが争われた裁判で、拾った人の言い分を次のように要約しました。

(投稿した文章)
『え?あなた?この犬を捨てたんでしょ?3か月も放置しておきながら…』

この投稿に元の飼い主が裁判所に抗議。岡口裁判官は、東京高裁長官室に呼び出されます。

(東京高裁・林道晴長官)
『ツイートを続けるということであれば、分限裁判を検討せざるを得ない。仮に裁判官を辞めることになってもツイートはやめないということか』

岡口基一裁判官)
『はい』

(林道晴長官)
『どういう理由なのか』

岡口基一裁判官)
『自分の表現の場だと思っている』

その後、東京高裁は、元の飼い主の感情を傷つけたとして岡口裁判官を懲戒するための裁判(分限裁判)を申し立てたのです。

最高裁判事15人全員で岡口裁判官を懲戒すべきかどうかが審理される異例の事態となりました。

岡口基一裁判官】
「オフの時間にツイートをしただけ。普通の裁判を紹介しただけなんですね。今、私の(表現の)自由が侵害されようとしているわけで、そこはやっぱりしっかり戦わないといけないんです。それができない人は法律家とはいえないと思ってますし、もしかして他の裁判官は、こういうふうに長官にいわれたらツイッターやめますというふうに言っちゃうのかもしれないですけど、そういう方が裁判で国民が権利の救済を求めてきたときにしっかり判断できるのかというと、私はそういう裁判官でいいのかと疑問を持ちます」

なぜ、裁判所は、岡口裁判官のツイッターをやめさせようとしているのか?

2年前には、縄で縛られた上半身裸の男性写真などをツイッターに投稿し、口頭で厳重注意。

今年3月には、東京都内の女性が殺害された事件の判決文を紹介する投稿について、文書で厳重注意を受けています。

阪高裁の元裁判官は「外部で積極的に発言を行う裁判官は冷遇されるのが裁判所の実態」だと話します。

【大阪高裁元裁判官・森野俊彦弁護士】
「裁判官の中にはっきりものを言う人がいるというのを裁判所が歓迎しない。枠をはみ出た人が一人でもいるのは、官僚統制が完成した組織にとってはものすごくやっかいなことですよね。問題とすべき部分はあったにせよ、それを目にした裁判の当事者が抗議を申し立てたことを機会に岡口さんに対して攻撃しているのが実態じゃないですかね」

岡口裁判官は、分限裁判を申し立てられた後、あらたにブログを立ち上げて裁判の情報をオープンにして争っています。

岡口基一裁判官】
「個々の裁判官は、司法当局というのをものすごく意識して、委縮して、忖度して…。そういうなかで、ほとんど事務的にサラリーマンのように日々の仕事を強いられる。それで本当に裁判官が自分の良心と法律にしたがった裁判ができるのか。それは、結局裁判を受ける国民の皆さんにとって非常に悲劇だということをしっかりと理解していただきたいと思っています」

一方、東京高裁は関西テレビの取材に対し、「最高裁の判断に関わることなので回答は差し控えたい」としています。

15人の最高裁判事が裁判官の「表現の自由」について判断する分限裁判。
岡口裁判官の主張を聞く審問は、11日に開かれます。

関連サイト)
最高裁判所が、NHKその他マスコミの傍聴要請を拒否  今日の審問期日 - 分限裁判の記録 岡口基一 (2018年9月11日)
https://okaguchik.hatenablog.com/entry/2018/09/11/081019

最高裁判所は、マスコミ各社に対し、本日の傍聴を認めない旨を通知しました。
そのため、マスコミ各社は、記者会見のほか、入り口での弁護団の入場の撮影にとどめる予定です。
なお、夕方5時から東京地裁記者クラブで行われる記者会見は、代理人のみならず私も参加する予定です。
ちなみに、寺西判事補事件では、3名の最高裁判事(尾崎行信、河合伸一、遠藤光男)により、
懲戒権者が裁判所自身であることなどから、分限裁判は公開の場で行なわれるべきであるとの意見が付されています。

関連サイト)
ツイートをめぐり分かれる評価 落合弁護士は擁護 - ボ2ネタ
http://d.hatena.ne.jp/bo2neta/20180910#p1