虎に翼 - 下野新聞(2024年4月4日)

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NHKの連続テレビ小説「虎に翼」が始まった。戦前の1938年に司法科試験に合格した日本初の女性弁護士の1人で、後に裁判官となる三淵嘉子(みぶちよしこ)をモデルとする。主人公役の俳優伊藤沙莉(いとうさいり)さんが自立した女性を目指す姿を熱演している。

三淵らの快挙から3年後、本県から第1号の合格者が誕生する。後に県弁護士会で初の女性弁護士となる川上(かわかみ)キヨさんである。

上三川町で育ち、三淵と同じ明治大法学部を卒業した。43年に弁護士登録して宇都宮市内に事務所を構え、主に少年事件や家事調停に携わったという。
中でも非行少年の更生などに取り組む「栃木少年友の会」の設立に尽力し、72年に初代会長に就いた。交流のあった稲葉勉(いなばつとむ)弁護士(81)は「ご主人との間に子どもがいなかったこともあり、少年少女に特別な思いがあったのかもしれない」と振り返る。

在職中の95年、川上さんは他界する。87歳だった。県弁護士会によると、95年当時の所属弁護士は90人で女性は3人。約30年を経た現在、全234人のうち35人にまで増えている。

「虎に翼」は中国戦国時代の法家韓非(かんぴ)の言葉で、「強い上にもさらに強さが加わる」を意味する。番組名は、男性と同等に働く意志に法の知も備えたことを表したのだろう。県内法曹界に女性活躍の道を切り開いた川上さんの人生と重なる。