<視点>「政治とカネ」裏金事件 違和感だらけの派閥 政治部・近藤統義 - 東京新聞(2024年2月21日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/310469

自民党の派閥の多くが解散を宣言した。半年前に政治部に異動してきたばかりで、特段の感慨はない。その短い間に抱いた違和感を、反省も込めて記録しておきたい。

政治資金パーティーを巡る裏金事件で、派閥の所属議員らが一斉に立件された先月19日。岸田派が説明の場を設けるというので、議員会館の一室に向かった。テレビカメラはなしで、会場に入るのは岸田派の取材を担当する記者だけ。派閥幹部は冒頭、さらりと口にした。「記者懇(談)という形でお願いします」。違和感その1だ。

「懇談」とはすなわち、懇(ねんご)ろな会談。記者会見とは性格が異なり、発言者を特定せずに報じる場合もある。永田町や霞が関でよくある取材形式だが、事件の重さに照らせば懇談はないだろう。始まってみれば、質疑を重ねる会見と同じ形になったものの、世論に向けて丁寧に説明しようという意識は希薄に感じた。

違和感その2。岸田派の元会計責任者は2018年からの3年間で、約3000万円のパーティー収入を政治資金収支報告書に記載しなかった。立派な虚偽記入罪だ。だが、幹部はこう言った。「いわゆる裏金に該当するものはありません」。頭がくらくらした。

その説明はこうだ。岸田派はお金を全て預金口座で管理している。収入も支出も全て口座に記録がある。不記載だった収入も口座に残っている。だから、裏金とは言わない―。私的に流用したり、自由に使えるよう不正にため込んだりしたのとはわけが違うと主張したいようだった。

裏金の定義は一つではない。ただ、いま問われているのは政治資金規正法の違反である。「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われる」ための法律だ。私たちの監視の目が及ばないお金は「表」か「裏」か。答えは明白ではないか。

最後に違和感その3。これが最も大きいかもしれない。

昨年10月から岸田派の担当になった。所属議員たちは週に1度集まり、昼食をともにしながら意見交換する。貴重な取材機会の一つで、会合後に弁当が余っていれば記者にも回ってくる。代金は派閥持ち。初めは面食らった。

居心地の悪さを感じつつ、うな重やすき焼き弁当を食べながら議員の話を聞いたこともある。政界の文化と言えば聞こえはいいが、世間の目にはどう映るだろう。こうした関係性のもとで、政治資金のずさんな取り扱いを見抜けなかった。今となっては自分の行動も甘かった。

ある世論調査では国民からの信頼感が最も低い機関・団体が国会議員、それに次ぐのがマスコミだ。「政治とカネの問題を是正することは政治文化を変えること」。政治資金に詳しい専門家のこんな言葉も聞いた。その文化を形作るのは有権者であり、メディアでもある。政治の信頼を取り戻す道筋をともに考え続けたい。