【政界地獄耳】「処理水」政治キャンペーンで既に負けている日本 - 日刊スポーツ(2023年9月1日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202309010000053.html

★8月30日、中国外務省次官補・報道官・華春瑩(ホア・チュンイン)はX(旧ツイッター)に英語で4連続投稿をし、「なぜ日本はトリチウムの希釈ばかりを強調するのか。福島の放射能汚染水には60種類以上の放射性核種が含まれているが、残りの放射性核種の処理はどうなるのか」「もしその水が本当に無害であるなら、なぜ日本は700億円を費やして宣伝キャンペーンを始めようとしているのか。なぜ日本は関係者による福島の放射能汚染水と海水のサンプル収集を拒んだのか」「この水が無害ではないと判明した場合、近隣諸国や他の多くの国が海洋放出しないよう勧告する中で、日本は海洋放出を続けられるのか。これが誠実で責任ある国の振る舞いなのか」「中国と日本には『覆水盆に返らず』ということわざがある。『こぼれた水は二度と元の盆に戻らない』という意味だ。受けたダメージは元に戻せない。日本は手遅れになる前にやめるべきだ」と畳みかけた。

★21年4月、政府は処理水の海洋放出を決めたが、科学的根拠を国際原子力機関IAEA)に求めたのは7月になってから。それが「科学的」と言われる根拠だ。だが中国のこの政治的キャンペーンの背景には米国のいうことは無条件に受け入れるのに中国の声は聞き入れないというメッセージがある。加えて福島第1原発事故以降、今日までの東京電力と日本政府の原発処理は日本国民と世界に誠実だったかを問うている。

★福島の事故以降、欧州は原発推進機運がうせ、世界最大の原子力産業会社「アレバ」も今では「オラノ」に変わった。その縮小された部分を中国がこの10年担ってきた。米・ウェスティングハウス原発をベースに中国が独自開発した第3世代原発に中国は自信を持つ。中国製第3世代原発は海外輸出も進み、今では中国は世界第2位の原発大国だ。その国に向かって「科学」を説いた日本政府の国内外への説明戦略と外交戦略が正しいと思うだろうか。既に日本は政治キャンペーンで敗北しているのだ。(K)※敬称略