【政界地獄耳】日韓関係改善は信頼がなければだめだ - 日刊スポーツ(2023年6月9日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202306090000085.html

東京電力福島第1原発の汚染水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画を巡り、先月23、24日に韓国原子力安全委員会幹部や海洋環境の専門家などおよそ20人で構成される視察団が福島などで調査を行った。直後の26日に韓国の最大野党の「共に民主党」が「汚染水の海への放出に反対する署名運動」を開始したところ、3日間で10万人以上が署名し、強い反対の意思を示した。5月19~22日に行った世論調査では85・4%が汚染水の海への放出に「非常に反対する」としている。また日本政府の「汚染水を海に放出しても安全に問題はない」には79%が「信じない」と回答。また調査団は信頼できるかの問いに71・7%が「信頼できない」と回答している。

★韓国の有力紙「中央日報」は8日、韓国与党「国民の力」の元医師・安哲秀(アン・チョルス)議員がこの問題に対して「国際原子力機関IAEA)の調査結果もそうだが、その結果だけでなく国民の受容性も必要だ」とし「この部分(国民受容性)をおろそかにすれば、いくら科学的に問題がないといっても国民は不安を持たざるを得ない」と報じた。韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は急速に日韓関係の改善に努め、政財界を理解させたかに見えたが、この夏にも放出予定の日本政府にとっても韓国政府にとっても、この放出問題は新たな反日カードになりそうだ。

★韓国国民が日本に悪感情があるのは理解できるが、日本に比べ政府の行動に厳しい目が絶えず向けられている。メディア以上に政権への国民のチェック機能が働いていることに驚くとともに、汚染水を処理水に言い換えても批判の出ない日本の政府への従順度の高さにも驚く。ただ政治が日韓関係を急速に改善しようとしても国民受容性がなければ、つまり、国民の信頼がなければだめだということを両国政府は学ばなくてはならない。(K)※敬称略