【政界地獄耳】恥ずかしい日本の人権意識の遅れ 先進国というにはお粗末すぎる - 日刊スポーツ(2023年8月8日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202308080000039.html

★大手メディアのニュースを見ていると4日に開かれた国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会議長のダミロラ・オラウィと、アジア・太平洋地域メンバーのピチャモン・イェオファントンの2人の会見では12日間の調査の中身はあたかも創業者のジャニー喜多川(19年死去)による性加害が告発されているジャニーズ事務所の調査に来日したような報道だ。だが、それも調査対象の一部で丁寧なヒアリングをしたが、本来の目的は企業や経済団体に対し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」の履行についてのヒアリングで、東京、大阪、愛知、福島などを訪れて、各省庁や企業、経済団体、労働組合や人権活動家から人権順守の状況を調査した。

★メディアやエンタメ業界における性暴力問題に加え、議長の「特に女性やLGBTQ、障がい者、部落、先住民族少数民族技能実習生と移民労働者、労働者と労働組合のほか、子どもと若者」に課題があるとの指摘は日本のタブーであり暗部だ。女性や性的マイノリティーへの人権はことに遅れていて男女の賃金格差が依然として大きいことや、非正規労働者全体の約7割を女性が占めていることこそが「日本の労働力におけるジェンダーの不平等をよく物語っている」とまで言われた。政府から独立した人権救済機関がないことも指摘され設置を強く要求された。声明で強調されたのは司法への懸念で、LGBTQの人権問題による救済の方法が確立されていないことと、幅広い人権問題に対する裁判官の認識が低いことで、「裁判官や弁護士を対象に、UNGPsに関する研修を含む人権研修の実施を義務づけることを強く推奨する」という恥ずかしい指摘だ。

★全体的には日本は男性社会で人権意識に乏しく、それを救済する司法の知識も勉強不足。独立した人権機関もないという先進国というにはお粗末すぎる指摘だろう。メディアがその実態を隠して報道してこなかったという指摘はニュースにはなっていない。(K)※敬称略