(ぎろんの森) 選択的夫婦別姓と最高裁 - 東京新聞(2021年6月26日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/112905

今週、新聞各社の社説の間で、意見が分かれた出来事がありました。選択的夫婦別姓制度を認めない現行の民法規定を「合憲」とする最高裁=写真=大法廷の判断です。
読売、産経両紙は司法判断を「妥当」としましたが、本紙は「司法が現状を追認し、国会に判断を委ねるばかりでは、一向に前進は望めはしない」と批判的に論じました。
朝日は「司法による救済を…待つ人たちにとって、承服できない決定」、毎日も「時代の変化に逆行する司法判断だ」と、合憲判断を否定的に受け止めています。
法制審議会が選択的夫婦別姓を導入する民法改正要綱案を答申してから二十五年。明治期以降の家制度を重んじる自民党保守派の反対で、立法措置は阻まれてきました。
弊社にも年配の男性読者から夫婦別姓に反対する意見が複数寄せられています。
判決が「国会で論じられ、判断されるべきだ」と議論を促し続けることには、意味があるのかもしれません。
ただ、問題の核心は立法の怠慢でなく、人権そのものにある、というのが私たちの主張です。同姓でないと婚姻を法的に認めないのは「憲法の趣旨に反する不当な国家の介入」とする裁判官の反対意見が私たちの胸に響きます。
最高裁裁判官十五人のうち合憲判断は十一人と多数ですが、四人は違憲としました。
最高裁裁判官は就任後初めて行われる衆院選で、国民審査を受けます。衆院が九月に解散された場合、今回の判断をした十五人のうち七人が審査対象となり、四人が合憲、三人が違憲の立場です。
辞めさせたい裁判官がいれば、投票用紙に×を付け、×票が過半数に達すれば、その裁判官は罷免されます。
国民審査の際に考えるべきは、今回の憲法判断だけではありませんが、重要な判断材料の一つにはなります。
衆院選の投票先と併せ、じっくり考えてみてはどうでしょう。日ごろ遠い存在の最高裁が案外、身近に感じられるかもしれません。 (と)