山城議長有罪判決 問われるべきは政府だ - 琉球新報(2018年3月15日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-682635.html
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名護市辺野古の新基地建設や東村高江の米軍北部訓練場ヘリコプター発着場建設に対する抗議活動で、威力業務妨害罪などの罪に問われた沖縄平和運動センターの山城博治議長に対し、那覇地裁は懲役2年、執行猶予3年(求刑懲役2年6月)の判決を言い渡した。
有罪判決は、新基地反対の民意を力で封じている政府の姿勢に裁判所がお墨付きを与えるものであり、納得できない。表現の自由、集会の自由など憲法が保障する権利を認めず、国連の人権基準にも抵触するような判決は受け入れられない。
本来、問われるべきは山城議長らではない。政府の方である。国土面積の0・6%の沖縄に米軍専用施設の70・38%を集中させ、新基地建設を強行している。山城議長らを逮捕・長期勾留し、抗議行動の力をそごうとしたのは明らかだ。
起訴状によると、山城議長は2016年1月に名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ工事用ゲート前でブロックを積み上げ、資材搬入の業務を妨害し、同8月には米軍北部訓練場付近で沖縄防衛局職員の肩を激しく揺さぶって約2週間のけがを負わせた。同10月には同訓練場の進入防止用の有刺鉄線1本をペンチで切断したとしている。
弁護側はブロック積み上げ行為について、威力業務妨害を適用することは「表現の自由を侵害し違憲だ」などと主張し、器物損壊を除く各事案で無罪を訴えていた。
判決は山城議長らの行為について「表現の自由を逸脱」する「犯罪行為であって、正当化することはできない」と指摘している。山城議長が公務員に暴行を加えて傷害を負わせたのは「悪質」で、反対運動のリーダー的存在として「主導的役割を果たした」と認定した。山城議長の「言動が共犯者らの犯行をあおったという面があり、この点について強い非難を免れない」と指摘している。
今回の判決は、人権を巡る国際法の理念に背を向ける内容だ。16年に日本を調査した国連人権理事会の特別報告者は、山城議長の逮捕と長期勾留について「抗議行動に不釣り合いな制限が加えられている」「裁判なしに5カ月間拘束したのは不適切で、表現の自由に対する萎縮効果を懸念する」と報告している。
ヘリ発着場建設や新基地建設の抗議行動に対する警備は、市民の抗議活動を政府が制限する際の国連ガイドラインを逸脱している。
ところが那覇地裁は、弁護側が提出した国際人権法専門家の証人申請を却下し、長期勾留を批判した国連特別報告者の資料などの証拠申請も却下した。判決は国連が指摘した国連ガイドラインに沿った内容ではない。
日本は国連人権理事会の理事国である。国際基準と向き合わない裁判所の姿勢は異様ですらある。