【政界地獄耳】昔の自民党はこんなことで足踏みしなかったのだが… - 日刊スポーツ(2023年8月1日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202308010000038.html

自民党政治の手法が随分と変わったと感じるのは実は自民党支持者たちなのではないか。7月23日、官房長官松野博一沖縄県の台湾に最も近い日本最西端・与那国島を訪れ、台湾有事の際、離島の島民をどう避難させるかなどの意見交換をした。だが、まず官房長官として言うべきことは先の大戦での沖縄の状況を踏まえ「この島を戦場にしない。そのためにありとあらゆる外交努力を怠らない。戦争にならない努力を最後まで徹底的に続ける」ではないか。

★少なくとも政府が言う台湾有事とは米中の対立に行きつくが、日本は直接関わらなくても米軍基地や自衛隊の基地が県内の離島に相次いで造られていることから県民や島民の不安が広がっている。それでも米国は中国と対話をかかさず続けている。それが功を奏さない場合に離島避難の議論が始まるのではないか。松野はシェルター整備や避難用の船舶が発着できる港湾施設整備などの陳情を受け「要望をしっかり検討し、できることから対応したい」と答えたが、その程度の答えならば直接視察しなくとも答えられる。日本の中国との対話は数少ない。外相・林芳正こそ中国外相に返り咲いた王毅との対話を続けているが、そのほかのチャンネルは閉ざされている。それこそ最近中国要人と会ったのは沖縄県知事玉城デニーだけだ。片や米国との対話は戦争の準備の議論ばかりで日本政府のいびつなスタンスが見える。

★話は変わるが、7月30日、経産相西村康稔は政府と東京電力が急ぐ福島第1原発の処理水海洋放出に理解を求めるため、福島県相馬市の相馬双葉漁協で漁業者ら6人と会談した。西村は「風評対策で用意している300億円」をちらつかせるが、会談後、同漁協組合長・今野智光は「安全と安心とでは全然違う」と答えている。風評対策費が300億円あっても安心は買えない。松野といい西村といい昔の自民党はこんなことで足踏みしなかった。(K)※敬称略