【政界地獄耳】2周遅れの政界が多くの人を苦しめる - 日刊スポーツ(2023年7月14日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202307140000033.html

★12日、最近は性の多様性について発信していたタレントのryuchell(りゅうちぇる)が亡くなったことがわかった。27歳だった。その前日には性同一性障害経産省の職員が女性用トイレの使用を不当に制限されたと訴えた裁判で、最高裁が使用制限は問題ないとした人事院の違法性を認め、「適法」とした2審判決を破棄したばかり。人事院経産省、すべての行政機関が対応を迫られることになった。政治の世界ではLGBTQに対して、理解が進まず中途半端な理念法ができたばかりだが、自民党保守派の建て付けは「伝統」が重んじられるべきというものだった。現実社会ではさまざまな動きがあり政界が2周遅れの動きを続けていることが、多くの人を苦しめているのではないか。

★思えば18年、英BBCのドキュメンタリー「日本の秘められた恥」で自民党衆院議員・杉田水脈がインタビューで、ジャーナリスト伊藤詩織が15年の元TBSテレビ記者・山口敬之から準強姦の被害を受けたと訴えた事件について「(伊藤には)女として落ち度があった」「男性は悪くないと司法判断が下っているのにそれを疑うのは、日本の司法への侮辱だ」と発言。その時、日本では“MeToo”運動は、大きなうねりにはいたらなかった。

★今年3月上旬、英BBCが放送したドキュメンタリーが「ジャニーズ事務所」の元社長ジャニー喜多川の未成年を含む性加害問題について扱うと、多くの被害者が名乗りを上げた。日本で“MeToo”運動が再び注目を集めている。そんな矢先、りゅうちぇるが亡くなった。死の原因は分かっていないが、自分の素を出すことがしづらい、自由に意見や気持ちを言う人が生きられない国を憂いて、若いタレントが命を絶ったのだとすれば、どう考えるか。政治は多様性の社会をうたいながら社会に忖度(そんたく)させ、同調圧力を行使し均一化を望む。その固まりに属さない人たちが過ごしやすい社会が作れなければ政治など無用だ。(K)※敬称略