<ぎろんの森>マイナカード不信の深刻さ - 東京新聞(2023年7月8日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/261718

マイナンバーカードを自主的に返納する動きが広がっています。マイナンバーに別人の公金受取口座がひも付けされたり、健康保険証と一体化したマイナ保険証に別人の情報が登録されたりと深刻なトラブルが相次ぎ、利用者に不安が広がったためです。

本紙は七日の社説「マイナカード 返納の重み受け止めよ」で「そもそも情報のひも付けによるトラブルは、政府が自治体などに作業を急がせたことが原因だ。点検手法を示さず迅速化だけを命じる政府の姿勢からは、原因を追究する誠実さは感じられない」「政府はカードの運用をいったん停止し、個人情報を集約することの是非を問い直すべきである」と訴えました。

本紙社説はこれまでも「白紙に戻して再考せよ」(六月二十一日)などと、マイナンバーカードやマイナ保険証の導入を強行せず、制度の是非を含めて再検討すべきだと主張してきました。こうした立場に変わりはありません。

読者からも「政府はいろいろなものにひも付けて普及させようとするが、やり方がずさんであきれる」「制度が破綻しているとしか言いようがない」などとカード不信を訴える声が届きます。

総務省によると、自主返納や失効によるマイナンバーカードの廃止枚数は二〇一六年一月の制度開始から今年六月末までの累計で約四十七万枚に達し、トラブルが相次いで発覚した今年六月の一カ月間では約二万枚に上ります。

しかし河野太郎デジタル相=写真(右)=は「その程度の数だと思っている」と深刻に受け止めていません。国民の不安を顧みず、国の政策を押し付けることが、民主主義だと考えているのでしょうか。
政府の個人情報保護委員会は月内にもデジタル庁に立ち入り検査をする方針だといいます。マイナカードにひも付ける個人情報の扱い方がずさんすぎたのでしょう。

とはいえ、本来問われるべきはカード取得を事実上義務化し、国が個人情報を収集、集約することの是非です。信頼性を欠き、民主主義国家にふさわしくない制度を認めるわけにはいきません。 (と)