<金口木舌>攻撃の標的になった首里 - 琉球新報(2023年7月5日)

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「カーラムチゼークー(瓦漆喰(しっくい)左官)は瓦も葺(ふ)くし、漆喰も塗る」。屋根瓦職人一筋に生きてきた首里出身の大城幸祐さん(89)は手仕事に心を込める

首里城識名園…。戦火で失われた文化財の復興に携わってきた。原点は沖縄戦にある。学童疎開から戻り、故郷の姿に胸を痛めた。「石ころしかなかった」。家々や草木は吹き飛ばされ、孤児になった学童もいた
沖縄戦で日本軍は主要部隊を首里に置いた。一日数千発の米軍の砲爆撃も、琉球石灰岩の下に掘った司令部壕には及ばなかった。第32軍の高級参謀だった八原博通氏は「洞窟内は危険絶無、絶対安全だ」と後に記した(「沖縄決戦」)
▼壕内で持久作戦を練り、沖縄の住民の犠牲を増やし続けた第32軍。今、自衛隊は陣地構築のため琉球石灰岩の掘削方法を検証する。自分たちは安全な所に身を隠し、住民はどうなってもいいという発想は変わらないようだ
▼「基地があるから狙われる」。大城さんのその言葉に、工房にずらり並んだ魔よけの漆喰シーサーたちもうなずいた気がした。