<金口木舌>受け継がれる沖縄戦体験 - 琉球新報(2023年4月11日)

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戦争を体験したことのない世代が、沖縄戦の記憶をいかに継承するか。この大きな課題に応えるモデルを示しているのがひめゆり平和祈念資料館である

▼資料館は2021年4月、若い世代に分かりやすく伝えるために展示替えをした。7日、97歳で亡くなった本村ツルさんは当時、車いすで新しい展示を見て、感極まった。「次世代の職員が自分たちの体験として、気持ちまで受け取ってくれた」
▼次世代を育ててきた本村さんの思いであった。資料館の建設や運営に尽力し、館長として04年に若い職員を初めて採用。リニューアル展示には、元学徒らから体験を聞いてきた職員の決意が表れていた
▼本村さんは体験を多くは語らなかったが、内面で自身の責任に向き合い続けた。たくさんの学友や恩師を目の前で失った悲しみ。後輩を救えなかった後悔。脳裏には逃げ惑った戦場が常にあった
▼若者に死を強いた戦前の教育の過ちと、平和な世の中へ命の大事さを伝えてほしいとも語っていた。その重荷を担い、受け継ぐのは今の世代の責任でもある。