<金口木舌>留守家族へのハガキ - 琉球新報(2022年3月17日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-1486925.html

色あせたはがきにいくつも付箋が貼られている。他の郵便局に転送された末に宛所が見つからなかったことをわびる郵便局員のメモも。京都府舞鶴引揚記念館に収蔵されている戦後引き揚げ関連資料だ

大阪府の男性が1948年、氏名や住所を読み上げるラジオ放送を耳にした。ソ連プロパガンダ放送に含まれるシベリア抑留者の安否情報だ。男性は必死でメモし、留守家族にはがき700通を送った
▼郵便局を転々としたはがきから、どうにか親類を探そうという局員の親身な対応がうかがえる。引き揚げは社会全体の関心事だった
中城村護佐丸歴史資料図書館で開催中の巡回展にこのはがきが展示されている。抑留体験者がシラカバの樹皮に書いた日誌や、収容所で描かれた絵も。6万人が犠牲になったと言われる抑留の体験者には多数の県出身者も含まれる
▼開会式で中村春菜琉球大准教授は沖縄でも資料を集め、記念館を造る必要性を訴えた。戦争と平和に関心が高まる今、生々しい資料は県民にもより身近に感じられるに違いない。