<ぎろんの森>命と暮らしを守るために - 東京新聞(2023年3月18日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/238746

先週の土曜日は「3・11から12年」の社説「リアルな感覚で防災を」を掲載しましたので「ぎろんの森」は二週間ぶりとなります。

今年は東日本大震災東京電力福島第一原発事故から十二年。三月十一日には東京新聞をはじめ新聞各紙が、震災と原発事故を論じる社説を掲載しました。在京紙の社説を見出しのみ紹介します。
 【朝日】「教訓捨てる『復権』許されず」
 【毎日】「終わり見えぬ苦難直視を」
 【読売】「移住を地域再建の足がかりに」
 【産経】「伝える意思を繋(つな)がる力に」
 【日経】「東北の復興は廃炉と両輪で進めよ」

朝日と毎日は原発事故に焦点を絞り、原発回帰を急ぐ岸田文雄政権の姿勢を批判する一方、原発を推進する読売は帰還を望む住民のために除染を進めるよう主張します。

東京新聞は、十二日の社説「ランドセルは忘れない」で人々から「日常」を根こそぎ奪うのが原発事故の本質であり、被災者の思いを尻目に政府が原発回帰を急ぐ中、原発事故のことを「忘れないでいよう」と訴えました。

本紙は十日にも「3・11から12年」の連続社説「つながりが生きる力に」を掲載しました。十〜十二日の三回にわたり大震災・原発事故に関して通常の二倍の分量に当たる長文社説=写真=を掲載したのは本紙だけでした。毎年この時期に長文の連続社説を掲載するのは大震災と原発事故を忘れない、という本紙の姿勢の表れにほかなりません。

震災から十二年の今年は仏教で節目の一つとされる「十三回忌」に当たります。これを区切りに、最後の慰霊祭を営んだ遺族会もあるようですが、私たちは来年以降も、命と暮らしを守るための社説を書き続けたいと考えます。

今年は関東大震災から百年の節目でもあります。首都直下地震南海トラフ地震は、いつ起きてもおかしくありません。私たちの命と暮らしを災害から守るにはどうすべきか。新聞の社説として、言うべきことを言い続ける決意を新たにしています。 (と)