【政界地獄耳】高市早苗の進退問題だけではない メディアは政治介入を体を張って止めたのか - 日刊スポーツ(2023年3月9日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202303090000074.html

★今回の総務省行政文書事案は経済安保相・高市早苗の進退にばかり焦点が当たっているが、この文書から総務省の許認可事業である放送局が、解釈変更など換えなくとも、ちょっと脅かしただけで態度を豹変(ひょうへん)させたことがばれていく様に放送局と系列の新聞が沈黙することに大きな問題がある。7日、立憲民主党は「放送法」国対ヒアリングを開催。総務省は小西議員が入手したものと全く同じで「これまで慎重に精査して来たが、放送政策課の共有フォルダに電子的に保存されていたもので、(行政文書として)妥当と結論付けた」とした。

★では高市が「ねつ造」と断言した理由は何か。先週は首相・岸田文雄も「正確性に欠ける」と言い続けた根拠も示されない。時間稼ぎをしていたに過ぎないだろう。このチャンスを放送局やメディアは国民に電波を取り戻すために、政治介入をさせず、第三者の独立機関に電波をゆだねる努力をすべきだ。今では新聞社も系列テレビ局は天下り先との認識。戦うべきところで新聞もこの問題を共有すべきだが、事なかれにやり過ごすだろう。今回の事案を高市の進退問題だけをニュースにすることだけは避けるべきだ。

★公開された78枚に及ぶ総務省の行政文書を読んでいると森友学園事件でつじつまを合わせるために公文書改ざんを命じられ、苦悩し自殺した近畿財務局管財部上席国有財産管理官・赤木俊夫の赤木ファイルを思い出さずにはいられない。今回の文書でも政治家の身勝手な気分や思いつきに翻弄(ほんろう)される役人の困惑が行間からあふれ出る。官邸事務方の見識も見て取れる。世間は政治家の言いなりになるのは役人でメディアではないと信じている。だが実態はどうか。放送・電波を守るためにメディアはもっと努力をしなくてはならないはずだ。首相は「放送法はゆがめられていない」というが、メディアは政治の介入を本当に体を張って止めたのだろうか。(K)※敬称略