【政界地獄耳】何が脅威か示さないまま防衛費増強 - 日刊スポーツ(2023年1月27日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202301270000022.html

★25日の会見で官房長官松野博一は偽情報の拡散など世界が仕掛ける情報戦に対応するため「情報の集約・分析、対外発信の強化、政府外の機関との連携強化などのための新たな体制を政府内に整備する」と言い出した。そもそも今まで何も対応してこなかった政府にも驚くが来年4月に内閣官房に「戦略的コミュニケーション室(仮称)」を発足させる見通し。

★どうもこの政権はまずぶち上げてから実現に向けて動き出すという本来とは逆の進め方をする政権だ。思い出していただきたい。17年10月の総選挙は北朝鮮脅威論一色だった。選挙前、3月の秋田県男鹿市を皮切りに山口、福岡、山形、広島、新潟などで内閣府の主導で弾道ミサイル攻撃に対備する住民避難訓練が続き、学校でも机の下に隠れる訓練が行われた。6月からは民放と全国70の新聞に政府広報を掲載。<1>頑丈な建物や地下に避難する<2>建物がない場合は物陰に身を隠すか地面に伏せて頭を守る<3>屋内の場合は窓から離れるか窓のない部屋に移動する。いつの時代の話かと思うだろう。このキャンペーンが功を奏したか、選挙で圧勝した安倍政権は12月、北朝鮮のミサイル防御のためのイージスアショア導入の閣議決定をするが、20年、時の防衛相・河野太郎は導入を中止した。

★岸田政権の防衛費増強は何が脅威か示さない。国民がなんとなく中国を想定しているだけだ。11日に開かれた日米2+2協議後の会見で米オースティン国防相は「(台湾)海峡で航空活動や水上艦の活動増加が見られる」としたものの「ただ、それが侵攻が差し迫っていることを意味するかどうかについてかなり疑問視している」と発言。「偽情報の拡散は、普遍的価値に対する脅威であるのみならず、安全保障上も悪影響をもたらし得るものだ」と発言したのは松野だが、この場合は米国防相が偽情報発信者ということになるのだろうか。(K)※敬称略