https://ryukyushimpo.jp/column/entry-1605989.html
津波の常襲海岸といわれる三陸沿岸部に伝わる言葉がある。「津波てんでんこ」という。てんでんは「銘々に」。それに三陸地方語特有の「こ」がついた。津波が来たらまずは自分の命を守れ。宮城県の東松島市教育委員会の冊子「東日本大震災の証言」に紹介されている
▼冊子にはこの言葉が教訓になったと語る40代女性の証言がある。津波の濁流にのまれ、浸かりながらも助かった。その時「命さえあれば何もいらないと本気で思った」と
▼1896年の明治三陸地震津波をはじめ、昭和三陸津波など多くの被害者が出た。それだけに地域の人々が次代へ語り継ぎ、かけがえのない教訓を言葉は埋め込んでいるのだろう
▼県内で対応する言葉は「命どぅ宝」だろうか。国王が発したとされるが、多用されたのは1982年の教科書検定以降との指摘もある。日本軍の住民虐殺の記述が削除され、問題化した
▼多くの犠牲の上に継がれた言葉に揺らぎが生じてはたまらない。天災にせよ、人為の戦争にせよ、命にかかわる言葉は地域を支え、この上なく尊い。