<金口木舌>ゆがみはいつただされる - 琉球新報(2022年9月29日)

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砂川裁判の国家賠償訴訟の原告、土屋源太郎さん(88)が振り返る。「こんなに長く闘えるとは思わなかった」。1957年に米軍立川基地へ抗議で立ち入った土屋さんは刑事特別法違反で起訴された

▼一審の東京地裁(伊達秋雄裁判長)は米軍の駐留は憲法違反で無罪としたが、最高裁が59年に覆して有罪となった。ところが2008年以降、この判決に疑義が生じる。米国で開示された資料がきっかけだ
▼資料には違憲判決に慌てる米大使館が当時、政府、最高裁の田中耕太郎長官と判決の変更をもくろむ様子が記されていたから驚く。判決の見通しや裁判官の考えなど評議の内容を田中長官が米大使へ伝達していた
▼公平な裁判の放棄に加え、司法権の独立をもゆがめる。評議の秘密を規定する裁判所法からも問題視されておかしくない
▼事件発生から65年。公正な裁判を受けられたとは到底思えない。国家賠償を求める訴訟は佳境に入る。土屋さんが言う。「いくつまで生きてりゃいいんだろ」。司法がゆがみをただすのにはあまりに長い年月が経過し過ぎだ。