<ぎろんの森>桐生悠々の「筆の力」- 東京新聞(2022年9月26日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/204412

私たち新聞記者の大先輩で反軍、抵抗のジャーナリスト桐生悠々=写真=を偲(しの)ぶ社説「桐生悠々を偲んで 言論の覚悟を新たに」(十四日付)に、今年も読者から多くの反響をいただきました。心よりお礼申し上げます。
 その一部を紹介します。

「新聞が先頭に立って社会や政治のために『言わねばならないこと』を発信する大切さをかみしめました。国民は新聞を読んで、社会をより良く生きるために努力しなければならないと思いました」

「軍部の検閲がありながら言論で戦ってきた悠々の姿に感銘を受けました」

「ジャーナリズムの役割が真に問われる今だからこそ、意義のある社説でした。悠々を知らない若年層には特に読んでほしい内容です。ネットで話題になるためにも、高齢者がもっと発信していかねばならないと感じています」

立憲主義が破壊されつつあるとき、私たちも黙っていては、賛成したことと同じだと自覚しています。『言論の覚悟』があって紙面を作る限り東京新聞を応援します」

こうした反響を読んで、東京新聞への励ましがうれしいのはもちろんですが、今年は読者自身が声を上げたり、行動する「決意の表明」が多く寄せられたことに、特に感銘を受けました。

私たちは、悠々が書き残したように「言いたいこと」ではなく「言わねばならないこと」を、堂々と書く新聞でありたいと考えますが、新聞がいくら「言わねばならないこと」を書き連ねても、読者の共感を得られなければ、社会を動かすには至りません。

悠々を偲ぶ社説を読んでいただき、声を上げる、行動することの大切さに気付いていただけたとしたら、それは言論弾圧に抗して書き続けた悠々の「筆の力」にほかなりません。

多くの国民が反対する中、故安倍晋三元首相の国葬が来週行われます。自民党と旧統一教会との不透明な関係も解明に至らず、ロシアによるウクライナ侵攻やコロナ禍も終わりが見えません。

こうした山積する問題に、私たちの社説は「言わねばならないこと」を書き続ける。読者の声を励みに決意を新たにしています。 (と)