【政界地獄耳】作られた原稿にない政治家の「戦争の言葉」…あと何回聞くことができるか - 日刊スポーツ(2022年8月16日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202208160000065.html

★77回目の終戦の日を迎え、政府主催の全国戦没者追悼式が15日に開かれた。天皇陛下は「ここに、戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」とした。

★首相・岸田文雄は式辞の多くが20年の元首相・安倍晋三、21年の前首相・菅義偉と内容が重なった。「戦後、我が国は一貫して平和国家としてその歩みを進めてきた」と宏池会の首相らしさをのぞかせ、広島選出議員を前面に出して半月前には国連で、第10回核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議に出席。「各国指導者等による被爆地訪問の促進などの『ヒロシマ・アクション・プラン』」を披露したが、その一部も式辞に盛り込んだ。だが本当に言いたかったのは「来年はこの広島の地で、G7サミットを開催します」とちゃっかりしたものだ。

★一方、衆参議長は戦争を知る世代の言葉として胸に迫る。78歳の衆議院議長細田博之は「衆議院においても昨年の総選挙の結果、戦前生まれの議員は10名を数えるばかりとなりました。戦争のもたらした多くの犠牲や苦難、その教訓について次の世代に語り継いでいくことは、戦争の惨禍を決して繰り返さないためにも極めて重要」。81歳の参院議長・尾辻秀久は「子どもの頃は、1度でいいからおなかいっぱいご飯を食べてみたいと思っておりました。そんな私を先日、参議院の議長にしていただきました。平和な時を生きたおかげさまであります。この平和が取り返しのつかないほど大きな犠牲の上に築かれていることを忘れてはなりません」。作られた原稿にない政治家の「戦争の言葉」はあと何回聞くことができるか。(K)※敬称略