【政界地獄耳】政権運営の保険に「国葬」選んだ岸田首相 - 日刊スポーツ(2022年7月16日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202207160000078.html

★元首相・安倍晋三の「国葬」について国論を二分しそうだ。当初、首相・岸田文雄は「国民葬」を視野に調整していたものの、まとまらないことがわかり職権で「国葬」とした模様だが、合理的な法律がない中で戦後歴代首相の多くが内閣・自民党葬で執り行っていたことを考えれば、自身の政権運営の保険として保守層取り込みのため「国葬」を選んだとしか言いようがない。だが民間からの寄付で賄う「国民葬」にして政府が援助した方が安倍の偉大さは伝わるのではないか。政界関係者は「それでは未来永劫(えいごう)、安倍が神格化してしまう」との懸念を示した。

★ネットでは「ニューオータニでサントリーに無償提供してもらえば5000円で可能」など桜を見る会前夜祭を皮肉る書き込みも見られる。戦史研究家・山崎雅弘はツイッターで「安倍晋三氏の国葬、何が問題か。生前の不正疑惑がすべてチャラになり、主要メディアは追及も検証もしなくなる(あるいは追及しない大義名分を得る)。『国民全体が敬愛した指導者』という虚構が創られる。批判的論評は主要メディアの自主検閲で封じられる。自民党統一教会の癒着もウヤムヤで幕引き」と指摘する。なるほど岸田から見れば「国葬」はすべてをその前と後に分け、幕引きに使いたいという腹が見えてくる。

★政界関係者が言う。「政教分離、政治と宗教の問題は自民党公明党政権が続いていたことであまり言われなかったが、集票と宗教団体関係が、統一教会で再びクローズアップされれば、一番に公明党が話題になる。それでなくとも自公の関係がぎくしゃくしている中、新たな火種としてくすぶり続けることになる」。岸田にとっては国民に新たな興味を用意するか、政治決着で宗教団体との距離を決めるガイドラインを作るなどが急務だろう。また1つ、憲法議論に入る前にやることが増えたようだ。(K)※敬称略