<金口木舌>商店街で回顧する古き良き時代 - 琉球新報(2021年10月4日)

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大正時代が舞台の漫画「鬼(き)滅(めつ)の刃」の影響だろう。小学生の娘が昔の草履に興味を示していたため、適当な物を探しに名護市の商店街に出掛けた

▼着物に合いそうな草履の代金500円を支払うと「とても助かる」と礼を言われた。大型店の進出で昔ながらの商店街は客足が遠のいているが、コロナ禍が直撃し、売り上げはさらに激減しているという
▼資本主義を支える大量生産・大量消費が環境問題などを引き起こす中、英経済学者シューマッハーの名著「スモール・イズ・ビューティフル」は示唆に富む。かつて人々の営みの中心だった地域の文化や環境、暮らしを大切にしつつ、小規模な地域経済や産業を守ることが提唱されている
▼ヒンプンガジュマルから名護十字路に至る目抜き通り。衣料品や日用雑貨店、理髪店、風呂屋など多様な自営業店が軒を連ね、にぎわいを見せた商店街の面影はもうない
▼地域が衰退の一途をたどるのを傍観するのはつらい。今も細々と営業を続ける店に立ち寄ると、もう市場に出回っていない小物や食器類などに出合える。在庫の山は宝の山かもしれない
▼緊急事態宣言がようやく明けたが、人流抑制が呼び掛けられたこともあり地域の商店街の人出は減ったままだ。感染対策を徹底した上で慣れ親しんだ地元の商店街に子や孫と出掛け、一緒に古き良き時代を回顧してみるのもいい。