<金口木舌>肝心なことは目に見えない - 琉球新報(2021年9月9日)

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ゾウを飲み込んだウワバミ(大蛇)の絵を描いた6歳の少年に大人は言った。「これは帽子?」。がっかりした少年は、絵描きになることを断念した。サン=テグジュペリの名作「星の王子さま」の一節である

▼大人の心ない一言が、子どもの可能性を摘み取ってしまう寓話(ぐうわ)だ。「大人の人たちときたら、自分たちだけでは何一つ分からないのです」という少年の言葉に胸が痛む
▼わが身を振り返る。大人の考えを押し付けたり、子どもの言い分を聞かなかったりして、秘めた才能を摘んでこなかったか。子どもの可能性は、数字や大人の価値観だけでは計れない。ダンスや音楽、スポーツなど成績だけで判断できないこともある
▼毎年小学6年と中学3年に課される全国学力テストの結果に、多くの大人が振り回されている。「全国最下位だった」「平均正答率の差が全国と縮まった」という言い方は、子どもの一面しか見ていない評価だ
▼学力テストと同時に行われるアンケートに興味をそそられる。「自分にはよいところはあるか」との問いに「当てはまる」「どちらかと言えば当てはまる」が小6・中3共に約76%で、自己肯定感は全国並みだ
▼学力テストの結果は、教師が自分の授業を振り返る機会として捉えるくらいがいい。「星の王子さま」のキツネも言っている。「肝心なことは、目に見えないんだよ」