全国学力テスト 親の労働環境改善したい - 琉球新報(2018年8月2日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-773509.html
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文部科学省全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。全国の小学6年生、中学3年生全員が対象だ。県内の小6は各教科で全国水準を維持したものの、中3は全教科の平均正答率が全国最下位を脱することができなかった。
2016年に県が発表した沖縄の子どもの貧困率は29・9%。全国の約2倍だ。
学力テストの結果は、家庭の経済状況、さらには、親の労働環境を映し出しているといえる。貧困を克服するために、親の働き方改革をはじめ、あらゆる方策を講じる必要がある。
今回の調査のうち、学習状況や取り組みを聞く質問で「地域の行事に参加している」との回答は小6が22・9%にとどまり、全国の35・9%を大きく下回った。
「自然の中で遊んだり自然観察をしたことがある」との答えは小6が59・6%、中3が41・6%で、全国より7〜8ポイント低い結果となった。
家族や地域の大人が関わる活動への参加が全国に比べて低調だ。非正規就労が多く、子どもに関わる時間を取りにくい実情を反映している。
地域行事に参加すれば大人とのコミュニケーションが生まれる。自然の中で遊んだり観察したりすることは、探求心を高揚させる。このような機会が他県の子どもに比べて少ない現状は望ましくない。
「家族と学校の話をしている」と答えた割合は小6、中3のどちらも全国より6〜7ポイント低かった。一日のうち多くの時間を学校で過ごしているにもかかわらず、過半数がそこでの出来事を話していない。多忙な親のせいだとすれば、悲しいことだ。家庭教育の重要性はいくら強調してもしすぎることはない。
県が1歳、5歳の保護者を対象に実施した未就学児調査でも、長時間労働などによる厳しい子育て状況が浮かび上がった。さまざまな調査が、親を取り巻く環境の過酷さを示している。
長谷川裕琉球大教授(教育社会学)が指摘するように、経済的基盤を安定させる社会的な施策が欠かせない。
学力テストの結果を心配するよりも、貧困の解消に力を注ぐことが先決だろう。それによって、学力の底上げが図られるはずだ。
一方で、教員や支援員が理科の授業を補助する「観察実験補助員」がいると答えた小学校はわずか1・2%(3校)で、全国の14・7%を下回っていた。授業に取り組む態勢の充実も課題だ。併せて、分かりやすい授業への工夫も求められる。
一斉テストの本来の目的は教師の指導方法、授業の改善に役立てることにある。学校、都道府県の競争や序列化を招くなら本末転倒だ。児童生徒の健やかな成長のために適切に活用したい。
正答率だけに目を向けるのではなく、背景にある本質部分を見落としてはならない。