子どもの貧困対策 次世代への投資が大切だ - 琉球新報(2018年12月26日)


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沖縄の子どもの貧困は極めて深刻な状況にある。貧しさ故にハンディを背負わされる子どもを1人でも減らすよう、あらゆる方策が必要だ。
今年もさまざまな角度から子どもの貧困の実態が明らかになった。
7月、県の未就学児の調査結果が公表された。1歳、5歳の保護者の2割以上が経済的に困窮しており、困窮度が高いほど制度やサービスのニーズが高まるのに利用できていなかった。ひとり親世帯はより深刻だった。
同じく7月に公表された全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)では、県内の児童生徒は学力が全国平均を下回るだけでなく、地域との関わり、家族間のコミュニケーションが乏しいことも浮き彫りになった。親の労働環境や経済的貧困との関係が強く示唆された。
最近発表されたスポーツ庁の調査でも、県内の児童生徒の校外クラブ加入率が全国平均の半分強にとどまることが分かった。「貧困率の高さも関係するのではないか」と関係者が指摘するように、貧困が背景にある可能性が高い。
こうした状況を受けて今年、県知事選挙をはじめとした各首長選挙で子どもの貧困対策が重要政策として掲げられた。
玉城デニー知事は、県民に約束した待機児童の解消や保育料無料化、中・高校生のバス無料化などを早期に実現してもらいたい。
内閣府の沖縄予算では、子どもの居場所づくりに重点を置く「沖縄子どもの貧困緊急対策事業」を継続し、新規事業の予算も計上している。沖縄に特化した対策として評価したい。政府は、米軍基地や自衛隊基地の建設など軍事面ではなく、子どもの未来のためにこそ税金を投じるべきではないか。
本紙が今月報じた県内の学童保育施設で防災対策が十分なされていないという問題も、政治の弱さが背景にある。
他府県の学童保育施設は公設が主流であるのに、沖縄は民間頼みになっているからだ。
沖縄は数多くの課題を抱えているが、その中で、過重な米軍基地の負担、振興政策の在り方、子どもの貧困が重要なテーマとなっている。沖縄戦、そして軍事優先の米国統治があり、現在も基地の過重負担が、負の遺産として重くのしかかっている。
しかし、過去の沖縄振興策は社会資本整備に偏ってきた。そこへ自主財源の乏しさもあって教育福祉政策で後れを取ってきた。沖縄振興の仕組みを根本的に見直すことが必要だ。
沖縄の子どもの貧困は、基地の過重負担などが複雑に絡み合った歴史的構造的問題と認識する必要がある。
また、雇用や勤労者の所得向上には民間の努力も求められる。多角的なアプローチによって、社会全体で貧困対策を進めたい。