【政界地獄耳】得意の人事でスゴ技連発 巻き返しへ菅のカードが増えてきた - 日刊スポーツ(2021年9月1日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202109010000060.html

★国民からなかなか評価が得られない首相・菅義偉は党内政局で電光石火の動きを見せた。この数日間が菅のすごみが垣間見える幾日になるのではないか。ほんの数時間前まで、支持率低迷と行革相・河野太郎や元幹事長・石破茂などの人気議員が出馬したらひとたまりもないと思われていた首相は8月30日朝に党政調会長下村博文を官邸に呼びつけ、「総裁選に立候補するなら政調会長を辞任せよ」と迫ったという。実際に恫喝(どうかつ)めいていたのか2人の本当のやりとりはわからないが、首相の官僚に使う得意の手法を政治家にも運用した格好だ。下村との会談はものの10分。一瞬で下村は軍門に下った。

★仕上げは前政調会長岸田文雄を出馬させるか、出馬辞退に追い込み、いずれにせよ幹事長に据えるというえさがまかれることだろう。選挙前の党人事刷新は来週7日には決まるという。これで幹事長・二階俊博の退任が固まった。二階は息子への禅譲を条件に政界引退になるだろう。これで首相しか立候補せず総裁選挙は終わるかもしれないが、動きの見えない石破が世論につられて出馬してくれれば、主流派は政治生命を絶つほどの戦いを挑むだろうが、石破は出馬を見送るだろう。首相と前首相・安倍晋三らいわゆる3Aはこれで二階を引退に追い込み石破を封じ込め党内環境を整える。

★次は立憲民主党代表・枝野幸男との党首会談だろう。臨時国会を開かない方針を固め、野党と話し合い解散に持ち込む腹だろうが物語には先がある。首相は党内を掌握したといっても国民の不人気は揺るがない。総選挙は厳しい戦いになるだろう。そのあとは維新でも国民民主でもなく、立憲との来年春の予算成立までの時限救国内閣づくりだろう。一見無謀のようだが連立の秋波で立憲は党が割れるかもしれない。自民党が最も恐れるのは来年の参院選挙で野党が勝ってねじれが生じること。目先の利益に飛びつく立憲幹部と、反対する党内でもめるならそれもいい。野党分断は成功する。与党に取り込めるならコロナ対策と予算案審議で苦労はなくなる。菅の持つカードが増えてきた。(K)※敬称略