(余録) レオナルド・ディカプリオさんが… - 毎日新聞(2021年7月25日)

https://mainichi.jp/articles/20210725/ddm/001/070/125000c

レオナルド・ディカプリオさんが米連邦捜査局(FBI)の初代長官、ジョン・エドガー・フーバーを演じた伝記映画「J・エドガー」(2011年)。フーバーが大統領から令状なしで盗聴を行う権限を認められる場面がある。48年間もトップに君臨したフーバーの力の源泉だった。
晩年には「議員の電話まで盗聴している」と批判が高まり、議会から「ソ連の秘密警察やヒトラーゲシュタポの手口だ」と批判された。映画のフーバーは「共産主義者や過激派の攻撃から国家を守ってきた」と正当性を強調する。
フーバー後も状況はあまり変わらない。01年の米同時多発テロ後には盗聴をネットや携帯電話に拡大することを認める反テロ法が成立した。告発サイト「ウィキリークス」は米国の盗聴が日本など同盟国にも及んでいると暴露した。
米国だけではない。技術の発達でどの国にも高度な盗聴が可能な時代だ。米ワシントン・ポスト紙などはスマホを乗っ取るイスラエル製スパイウエア「ペガサス」がサウジアラビアやインドなど10カ国以上に販売され、記者や人権活動家の監視に使われていると報じた。
コンピューターウイルスと同じで、本人の知らないうちに通話記録やメールなどの情報が外部に送られるというから恐ろしい。盗聴を上回る情報収集手段だ。
「ペガサス」はテロ対策用に開発されたというが、監視対象を決めるのは権力機関だ。民主主義が未成熟な国ではフーバー以上に恣意(しい)的な利用が横行しているのではないか。

 


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