<南風>子どもの安全と安心 - 琉球新報(2022年2月19日)

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沖縄県でヤングケアラーと思われる子どもの数が発表された。この数は「氷山の一角」と言われ、今や大きな社会問題として物議を醸している。
ヤングケアラーの概念から言うと、私の幼少期はこれに該当する。家族に重度の身体障がいを持つ姉妹と、大病を患う妹がいた。父は単身赴任、母は妹の付添で、子どもたちだけで家で過ごすことが多かった。自分のことは元より、障がいを持つ姉妹の食事や入浴の世話、学校の送迎は分担で行った。
姉は送迎で度々、学校に遅刻し、担任から注意を受けていた。私は妹のクラスに呼ばれ、トイレの世話をさせられることが度々あった。
今では考えられないが、学校生活で日常的に繰り返され「嫌だ。つらい」と思ったことはあったが、私たちの心を救ってくれたのは、温かい言葉を掛け、支えてくれる周りの大人だった。
その中で、子ども心に自分が家族の力になれることを誇らしく思えていた。
私は、家族に障がいや病気を持つ人がいることは、決して不幸ではなかった。むしろ家族が支え合い、協力し生きていくことは、優しさや思いやり、協同の心を育むきっかけとなった。
ヤングケアラーの定義は法律上、定まっていないと言われる。貧困と隣り合わせで早急に助けが必要な子から、大人の寄り添いで乗り越えられる子など、さまざまではないだろうか。
言葉だけが先走り、条件に一つでも当てはまると「かわいそうな子」となり、自分のこれまでの行動を否定してしまうことになってほしくない。
昔と今では社会情勢は違うが、周りの大人が現状をしっかりと見極め、適切な支援をすることで、子どもたちが孤立することなく心身ともに安全で安心な生活ができることを願う。

(比嘉佳代、おきなわedu代表取締役