(政界地獄耳)「見直した」「初めて見た」川内質問 - 日刊スポーツ(2020年11月4日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202011040000129.html

★2日の衆院予算委員会。テレビで視聴した人を含め、多くの人の感想は一致したものだろう。首相・菅義偉の答弁は棒読み、同じ答弁の繰り返し、はぐらかし、答弁拒否を組み合わせる手法で議論はかみ合わず、説明もつじつまが合わなかった。そもそも「人事上の秘密で答えられない」とか「ご指摘にはあたらない」は質問の答弁ではなく、議論の枕ことばでしかない。中身に触れないのだ。野党議員もよく我慢して質問し続けたと思う。

予算委員会初日でこれならば先が思いやられると自民党も思ったろうし予算委員会与野党理事たちも早晩、立ち往生すると予想したことだろう。その中でベテランの立憲民主党川内博史の質問は傾注に値する。学術会議問題を冒頭にただした川内はかたくなな答弁を続ける首相に対して「学術会議を改革したいのであれば、6人を任命したのち、改革の議論をすればいいのではないか。学術会議がもう1度6人の任命を提出すれば、任命の有無を再検討するか」と問うた。

★首相は川内質問をうなずきながら聞いていた。この問題の官邸の打開策は強行突破しかない。川内の質問は新しい野党の質問の手本になる投げかけだった。この予算委員会では自民党が差し伸べるべき手でもあった。だがそれを川内はさらっとやってのけた。川内らしい野党の“たたき上げ”議員らしい質問の仕方だった。攻め込むべきところと大きく両手を広げる勘所をついた質問だった。この助け舟を官邸がどう受け止めるかはわからない。官邸スタッフの体裁やプライドが許さないかもしれない。しかし川内のポンと上げたトスをどう拾うかは首相の器にかかっている。川内の国会事務所には質問の最中から「立憲が嫌いだったが見直した」「こんな質問のやりとりを初めて見た」という支持者以外の電話が目立ったという。(K)※敬称略