(私説・論説室から) コロナ禍と外国人労働者 - 東京新聞(2020年10月28日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/64746

「日本人より働きに来ている外国人たちの方が新型コロナには神経質だ」。友人はそう話した。「祖国では簡単に病院にかかれないし、日本で感染すれば、失職に直結だ」
友人は労働運動の活動家である。関わる職場の多くは中小零細企業で、大半の組合員は外国人を含む非正規雇用の労働者たちだ。
新型コロナ禍で多忙を極めているという。企業の雇い止めが多発しているためだ。出稼ぎ目的の外国人労働者に長引く争議は不向きである。だから、従来は雇い止めでも金銭解決が多かった。相場は数カ月分の給与額だ。
だが、コロナ禍でこの慣例は崩れた。「完全に行き詰まって、払えない会社が多い」
雇い止めのほか、休業手当の未払い相談も多いという。国はコロナ禍を受け、中小企業を対象に企業が休業補償に応じない場合、個人で国に補償を請求できる制度を設けた。
ところが、これが機能していないという。「申請には事業所の労働保険番号が必要なんだが、保険の加入義務を怠っている企業が少なくない。それがバレかねないので教えないんだ」。いわば、企業の脱法行為のツケが弱い立場の外国人労働者を直撃している形だ。
本来は行政がにらみを利かせるべきだが、その腰は重い。一方、政府は現在、人道的に疑問の多い入管難民法の改正を検討中だ。外国人労働者いじめの脱法行為を看過しつつである。どうにも筋が通らない。 (田原牧)