(政界地獄耳) 菅首相「未来」を示さぬまま外遊へ - 日刊スポーツ(2020年10月19日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202010190000077.html

★国会も開かず、国家ビジョンや外交方針も示さないまま外遊に出かける神経は理解しがたい。18日、首相・菅義偉は就任後初めての外国訪問先となるベトナムインドネシアに向けて出発した。飛び立つ前に記者団に目的について説明したが、この時期に首相自ら出向かなければならないような外交目的は見当たらない。よほど重要な極秘の案件を抱えているか、コロナ禍に外遊をすること自体が目的だったと言わざるを得ない。

★今、首相が時間とカネと国内の人材を駆使して考え抜くべきことは、コロナ時代とコロナ後にどんな社会をつくるかという命題に向けた国家の方針をつかさどることではないだろうか。政権の最大の矛盾は、コロナ禍で失業や倒産、雇用不安などが始まり、今後も拡大するとみられる中、首相の持論である自助・共助・公助を進める新自由主義という全く正反対の政策を、平時のように打ち出す政治勘の悪さと、間違った政策が繰り広げられる危険だ。市場原理は生き延びることを最優先し、何をやっても勝てばいい、残ればいいという風潮が一層強くなるはずだ。

★改革という名の規制緩和策は大企業が仕事しやすい環境はつくれるかもしれないが、社会保障は削られ派遣社員が増えるだろう。それでも失業するよりましと飛びつくものの同一労働同一賃金などあり得ない社会になってしまう。何よりコロナ禍で普通の生活ができなくなった後、前よりも悪い生活になるかもしれないという不安を国民が抱えながら生きていかなくてはならないことに「心配するな。国民の生活は必ず守る」と政府が言わない社会を目標にしているのだから、あてにできるはずない。外遊後、国会で首相がこの生活の未来にどう踏み込むかがこの1カ月の首相の動きから見通せない。(K)※敬称略