首相の自粛要請 国民目線に立っているか - 信濃毎日新聞(2020年4月14日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200414/KT200413ETI090008000.php
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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、繁華街への外出自粛要請を全国に拡大する方針を安倍晋三首相が表明した。同時に緊急事態宣言を出した7都府県の全事業者に対し、出勤者を最低7割減らすことも求めている。
自粛を要請するのは、接客を伴う飲食店の利用だ。安倍首相はバーやナイトクラブ、カラオケ、ライブハウスを挙げている。感染者集団「クラスター」の温床となっていることが理由だ。
東京都内などの休業要請に伴い、感染者が他の地域の飲食店を利用することを防ぎたいとの思惑があるという。
感染は大都市部だけでなく、長野など地方にも拡散している。さらに広がる前に防止策を講じることは必要だろう。
ただし、利用の自粛は商業施設の経営問題に直結する。政府は損失への補償を否定する姿勢を続けている。休業手当を出した企業に対する雇用調整助成金も全額補助ではない。企業の負担は残り、支給まで1カ月程度かかる。
家賃などの固定費や支払いなどがあれば経営維持は困難になる。救済は十分とはいえない。
会社都合で休業させる場合は休業手当の支払いは義務だ。それなのに、拒否されたとの相談が連合などに寄せられている。負担や手続きが理由とみられる。従業員の生活維持が困難になりかねない。
安倍首相は今回、利用の自粛を呼び掛け、施設には休業を要請していない。補償問題に直結することを嫌ったのではないか。結果的に営業を維持できなくなれば、休業要請と同等と考えるべきだ。
共同通信の全国世論調査によると休業要請に応じた企業や店舗に「国が補償するべき」との回答が8割以上に上った。財政上の制約で全額補償は困難だとしても、国が全国一律の基準で補償する仕組みを考える必要がある。
在宅勤務の要請も同様だ。在宅勤務を進めるには、パソコンやソフトウエアなどITシステムの投資が必要になる。中小企業には大きな負担になるだろう。
工場など在宅勤務が困難な業種もあり、派遣労働者などの対応も課題になる。国が十分な支援策を用意する必要がある。
一方的に自粛を呼び掛ける政府の対応は、困難が増している国民や企業の現状が見えていない。自宅でくつろぐ映像をSNSで配信し、外出自粛を呼び掛けた安倍首相に対し、批判が殺到したことでも明らかだ。政府は国民の目線で対策を打ち出すべきだ。