(政界地獄耳) ビジョンなき政権 国民が見えているか - 日刊スポーツ(2020年10月13日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202010130000125.html

★早くも菅政権が発足してから1カ月になろうとしている。当初の世論調査は高支持率で、パンケーキ好きの令和おじさんの庶民性は大いにアピールされた。前任者が自由奔放だったために、後ろからついていくような、令和どころか昭和の色合いが強いファーストレディーまで人気の的になった。安倍政治を継承しながら改革を唱える政権の仕事は何なのか、いまだに首相・菅義偉から明確なビジョンは発信されていないが、携帯電話の値下げを打ちあげ、縦割り行政110番ときた。国家ビジョンなき政権の発足だった。今月26日からの臨時国会で、それは示されるのだろうか。

★一方、圧倒的な強さで当選した党総裁選の党内の菅支持は、砂上の楼閣だったことが次第に分かってくる。安倍政治の継承としながら、最近はそれも言わなくなりつつある。党内基盤のない政権はまず、党内外からの「支持率の高いうちに解散・総選挙を打て」の大合唱に見舞われる。官邸が党内をグリップできていない証拠だ。その後も党内での選挙区公認争いが勃発したり、宏池会再編など派閥の官邸包囲網ともとれる動きも強まった。

衆院議員・杉田水脈前近代的な発言を、党はベテラン議員も女性議員もたしなめたり一喝することができなかった。片や、官邸もこの発言が政権の妨げになるという判断はせず放置した。政府与党の感度の悪さを物語る。そして学術会議の任命拒否問題。学者の扱いなどに国民は興味を示さないかと思ったが、理由も言わず、いささか強引に決めた首相の対応に学問への敬意や知恵を借りるという発想はないようだ。毎朝、朝食だけは御用記者や御用学者たちが誇らしげに会食を首相とともにする。それを問う会見は開かず、パンケーキを食べさせてけむに巻いたり、選ばれた社だけがインタビューに臨めるなどおかしな対応が続く。いずれも、その先に国民がいることを無視するような態度には閉口する。これが菅内閣の1カ月だと思うと先が思いやられる。(K)※敬称略