米軍の泡消火剤放置 無責任体制改めるべきだ - 琉球新報(2020年4月14日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1106633.html
https://megalodon.jp/2020-0414-0950-13/https://ryukyushimpo.jp:443/editorial/entry-1106633.html

一体全体、沖縄県民を何だと思っているのか。米軍の傍若無人な振る舞いに歯止めをかけなければならない。
米軍普天間飛行場から有機フッ素化合物PFOSを含む泡消火剤が流出した問題で、米軍も日本政府も除去作業を放棄した。同飛行場のデイビッド・スティール基地司令官は、宜野湾市職員に「雨が降れば収まるだろう」と述べた。飛行場内からの流出防止対策を最優先し、それに専念するという。基地周辺住民の命や健康を全く考慮しない対応であり、暴言と言っていい。
市の消防職員が除去作業に当たったが、あまりにも量が多いため作業を断念した。現場に来た米軍は回収せずに市消防の作業を傍観するだけだった。沖縄防衛局の職員も同様で、外務省沖縄事務所は職員を派遣していない。誰が責任を持って取り除くか不明確なまま、結局は自然に流れていくのを待つだけになった。毒性のある泡が広がっているにもかかわらず放置するのは、あまりにも無責任だ。
PFOSの有害性は、雨が降って消えるものではない。2016年には米軍嘉手納基地に近く、水道水の水源でもある比謝川から検出された。同年以降、普天間飛行場近くの地下水からも高濃度で検出されている。司令官は、水中でしぶとく残る物質であるとの認識を完全に欠いている。
専門家によれば、すぐに健康被害は生じないが、体内に蓄積することでがんを発生させたり、体の発達に影響を与えたりするという。米国では、消防隊員の暴露による健康被害が問題化している。国際的に規制され、日本国内では使用も製造も禁止だ。
米軍も毒性を認め、PFOSを含まない消火剤に順次交換するはずだった。今回の流出で、交換が進んでいない実態が判明した。流出は昨年12月にも起きたばかりだが、基地への立ち入り調査をはじめ対応は進んでいない。障害になっている地位協定の改定は不可欠だ。
米軍も日本政府も問題を解決する意思がないとしか思えない。住民の命や健康をあまりにも軽視している。
米軍の野放図な行動を助長してきたのは、日米地位協定の改定を求めず、基地内の事実上の「治外法権」を是認してきた日本政府だ。宜野湾市の松川正則市長は日本政府関係機関に抗議し、普天間飛行場内への立ち入り調査などを求めた。市も県も一段と強い姿勢で日米両政府に問題の解決を迫るべきだ。
この無責任体制を改めなければならない。日米両政府は、広範囲に流出した有害物質が除去されず放置された事態を深刻に受け止めるべきだ。最低限、県による基地内の立ち入り調査は欠かせない。泡消火剤の回収と併せ、河川水などに含まれる有害物質を監視することも必要だ。周辺住民や作業に当たった市消防隊員の健康への影響もチェックした方がいい。