[PFOS漏出事故]米軍は説明責任果たせ - 沖縄タイムス(2020年4月16日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/560615
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米軍普天間飛行場から発がん性が指摘されるPFOS(ピーホス)を含む泡消火剤が大量に漏出した事故で、防衛省は、日米地位協定の環境補足協定に基づき、米側に立ち入りを申請した。
2015年の補足協定発効以降、「環境に影響を及ぼす事故」としては初となるケースだが、申請は事故から4日後。直後の現場の状況把握・調査を考えれば、遅すぎると言わざるを得ない。米側は、直ちに申請を許可し、県や地元宜野湾市の立ち入りも認めるべきだ。
補足協定署名当時、岸田文雄外相は、地位協定の内容を補う協定策定は、「歴史的意義を有する」と強調した。日米両政府は「実質的な地位協定の改定」と胸を張り、「沖縄の基地負担軽減につながる」とアピールしたが、果たして実態はどうだったか。
16年、普天間飛行場周辺の河川からPFOSが高濃度で検出された際、県は任意で立ち入りを求めたが認められなかった。嘉手納基地も同様だ。
そもそも、協定で環境汚染の覚知は、米軍からの通報を前提としている。日本側(国、自治体)は「現地視察を要請できる」と定める。今回は通報があったものの、申請に対しては、米軍が「実行可能な限り速やかに回答する」「全ての妥当な考慮を払う」とあるだけで、実現の可否は裁量に委ねられている。さらに「視察」は見るだけ、とも解釈できる。水や土壌などのサンプル採取も米軍次第だ。
日本側が基地内を調査できるという担保は全くないという大きな欠陥がある。

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求められているのは、米軍の説明責任だ。
事故では、泡消火剤約22万7100リットルが漏れ出し、うち6割を超える14万3830リットルが民間地域に流れ出た。近くには保育園などがあり、浦添市の牧港漁港にまで達した。
米側に排他的管理権を認める日米地位協定により、基地内の汚染を自治体が把握するのは困難だ。今回のように消火剤の泡が河川や住宅地で「可視化」される事故は、氷山の一角にすぎない。
本紙の情報公開請求で「基地外へ流れたことは確認されていない」とされた昨年12月の泡消火剤漏出事故が、実際には民間地域に流出していたことが、明らかになった。
普天間飛行場で05年から16年の間に航空機燃料などの流出事故が156件発生していたにもかかわらず、日本側に通報されたのは4件だけだ。
米軍は環境汚染を矮小(わいしょう)化、隠蔽(いんぺい)し続けている。

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人為的ミスか。施設の老朽化か。その有害性から製造が禁止されたPFOSを含む泡消火剤が、どう使われ管理されているのか。住民の健康と安全に関わる問題にもかかわらず米軍の説明は不十分だ。
政府は、過去の事故についても、内部報告書の提出を求めるなど原因を明らかにし、米軍に実効性ある再発防止策を要求するべきだ。
軟弱地盤で工期が延びる辺野古新基地は、完成が30年代半ば以降にずれ込む公算が大きい。危険性除去と住民の健康を守る最善の策は、普天間飛行場の一日も早い閉鎖だ。