(政界地獄耳) 生活安心させる「超法規」後ろ向き - 日刊スポーツ(2020年3月2日)

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★一昨日(先月29日)夕刻に開かれた首相・安倍晋三の記者会見はすこぶる評判が悪い。冒頭から19分にわたり首相は新型コロナウイルスに対応するためのさまざまなプランを繰り出したが、掛け声は大きく立派なものの具体的な中身はなく、予算も予備費からの計上だけで、中長期的な展望に立つものではなかった。その前に唐突に発表した小中高の学校の休校要請への戸惑いと反発への言い訳に始終したともいえた。

★検査態勢、病院での受診の仕方や不安、休業補償を含め、しばらくの生活の不安について国民を安心させる内容がないことで、この会見で国民の不信を買ったのではないか。国民は政治に対して法とルールを守り秩序ある社会に沿いたいと願っている。緊急の特別措置法の整備も必要だろう。ただこのような非常時に対して国民は政治の力を発揮してほしいと考える。超法規の導入だ。法律ではこうなっているが時期を決めて厳格に決められた部分を緩和させるとか、税制や支払いの優遇や支払い不要にする措置など、本来なら認められないダイナミックな融通である。

★ところがこの政権は公務員の定年延長には超法規を適用するなど「新しい考え方」だとか「異次元」と内向き、または私物化には極めて前向きだが、すべての国民への超法規には後ろ向きだ。無論、それが法秩序を預かる内閣の責任というならば、すべてにおいて厳格に運用すべきだろう。その意味ではこの一連のコロナウイルス対策における首相の動静は自己責任を勧める安倍政権・安倍政治の限界を感じる。今までなら正面突破で押し切った強引な手法そのままに進めた結果、すべての国民の反発を買ったともいえる。特措法では間に合わない、解釈に無理があるなどの壁に加え緊急事態を鑑みる施策とリーダーシップが必要な時に質問に逃げ回った瞬間、国民の気持ちは離れたのではないか。(K)※敬称略