(筆洗) 政府の一斉休校の要請- 東京新聞(2020年2月29日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2020022902000123.html
https://megalodon.jp/2020-0229-0912-29/https://www.tokyo-np.co.jp:443/article/column/hissen/CK2020022902000123.html

学校は城壁である。ジャン・シャトーというフランスの二十世紀の哲学者が主張している。

<学校は牢獄(ろうごく)ではなく、砦(とりで)である。子供は生まれた時から、その周りに城壁を築き、守らなければならない…学校とはまさにその城壁なのだ>

教育論で名高いルソーの思想をもとに、傷つきやすい成長過程の人格を守ることこそが数ある学校の役目の中でも、もっとも大事なのだという。子どもたちの実感は別にして、うなずけるところはあるだろう。
春休みを含めれば数週間だろうか。短くないこの期間、学校の「城壁」としての大事な役目は学校の外にゆだねられることになる。異例の事態だ。新型肺炎の感染拡大を防ぐことを目指した政府の一斉休校の要請である。
週明けから、各地の小中学校などで実施されることになりそうだ。この間、子供を守り、ウイルスの感染防止にも心を配らなければならない。低学年の児童のいる共働きの世帯をはじめ週明けに向けて対応に戸惑っているという方は、多いのではないか。
感染拡大を防ぐ手段として、休校は確かに有効なのだろうが、唐突の感はいなめない。必要性も、効果のほどもまだ説明は足りないようにみえる。
社会の危機は弱い立場の人にまず及びがちである。一人親で非正規雇用の方などは、仕事を休むと生活そのものが厳しくなる。守る壁となるような支援策が必要であろう。