幼児期の吃音 支援体制の拡充が必要だ - 毎日新聞(2020年2月25日)

https://mainichi.jp/articles/20200225/ddm/005/070/044000c
http://archive.today/2020.02.25-010209/https://mainichi.jp/articles/20200225/ddm/005/070/044000c

話す時に言葉が滑らかに出ない「吃音(きつおん)」について、幼児期の大規模な実態調査が初めて行われた。調査を基に、有効な支援につなげることが求められる。
吃音の人は、言葉が詰まって間が空いてしまったり、語頭などを繰り返したりする。海外の調査によると、幼児期には5~8%程度の割合で発症する。
日本ではこれまで大規模な調査が実施されておらず、発症率や治癒率が明確になっていなかった。
このため、国立障害者リハビリテーションセンターが中心になり、大学などと協力して、約2000人を対象に3歳児健診の時と、その後の約2年間に追跡調査をした。
その結果、3歳までに約9%が発症し、5歳までに約7割が自然に治っていた。また海外で開発された治療方法が約7割の幼児に有効であることも分かった。
センターは調査を踏まえ、適切な治療の時期や方法について、医療機関用にガイドラインを作成した。幼稚園などに対しても、幼児への対応についての資料をつくった。
これらによって、吃音の子どもを持つ親の不安が軽減されることが期待できる。
一方、幼児期の吃音をめぐっては、訓練に当たる言語聴覚士が足りない問題がある。
言語聴覚士認知症の患者や、脳卒中などで失語症になった人が言葉を理解したり、話したりできるようにすることを支援する。
高齢化社会での需要が高まる中、高齢者施設で働く言語聴覚士が多い。幼児へのケアまで行き届いていないのが実情だ。
国や自治体は幼児期での支援の重要性を考慮して、体制の拡充を図るべきだ。
忘れてはならないのは、吃音がいじめやからかいの対象になりやすいことだ。教員の理解も十分ではないといわれる。
大人になって就職活動で差別されたり、就職後に不当な扱いを受けたりするケースは少なくない。自身が吃音だということを周囲に明かしにくい悩みもある。
吃音であっても、支障なく生活している人は多い。社会の理解を一層進めたい。