神戸教員間暴力 背景と向き合い対策を - 朝日新聞(2020年2月25日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S14378441.html
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問題の根深さが浮き彫りになった。関係者の責任を問うだけでなく、常軌を逸した行為を許した背景と向き合い、対策を講じていかねばならない。
神戸市立東須磨小学校でおきた教員間の暴力や暴言をめぐり、外部の弁護士からなる調査委員会が報告書をまとめた。
「くず」「死ね」といった罵倒と、体当たりやひざ蹴り。激辛カレーを顔に塗りつけ、食べさせる――。採用3年目の男性教諭(25)の尊厳を傷つけ、教壇に立てなくなるまでに追い詰めた先輩教諭4人によるハラスメントとして、調査委は120を超える行為を認定した。前校長についても被害教諭への2件のハラスメントを指摘した。
4人の加害側教諭は必ずしも集団で暴力・暴言を重ねたわけではなく、被害教諭との関係も時期により変化していた。総じて「ふざけやからかい」と考えていたようだが、言語道断だ。前校長ら管理職も含め、それぞれの悪質度に応じて、定められたルールと手続きに従い厳正に処分しなければならない。
周囲はなぜ早期に止められなかったのか。調査委はそうした疑問に基づき、他の多くの教諭からも聞き取りをした。見えてきたのは、複数の要因が重なり、子どものいじめにも共通する構図ができていた実態だ。
まず問うべきは、人権と規範への意識を欠いた加害側教諭である。そして、前校長の威圧的な姿勢が異様な言動を許す空気をつくり、加害側教諭を指導した現校長も配慮不足で被害教諭への報復的行為を招いた。ハラスメントに関する教育と研修は不十分で、学校外・市教委外への通報窓口も不備だった。報告書から読み取れる概要である。
先輩との関係を拒めなかった被害教諭は、信頼できる相談相手がおらず、耐えるしかなかった。その様子は関係を受け入れているようにも見えた。他の教諭は多忙さもあってハラスメントに気づかず、気づいてもかまう余裕がなく、見て見ぬふりと言わざるをえない面もあった。
子どものいじめを察知し、指導・予防することを求められている先生の間に、それと同じ構図ができていた。調査委は、研修や相談窓口の見直しとともに、子どものいじめ問題について学校現場の認識をいま一度確認し、職員室をPTAや地域に開くよう提案している。
東須磨小では、今回の被害者と加害者以外の教諭の間でも、さまざまなハラスメントがあった。先生同士の関係がおかしくなった学校で、子どもたちが楽しく学び、生活できるはずがない。他の学校もひとごとと片付けず、現状をみつめ、問題の解決に努めてほしい。