教員間のいじめ 放置された原因の解明を - 信濃毎日新聞(2019年10月14日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20191014/KT191011ETI090007000.php
http://web.archive.org/web/20191015001746/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20191014/KT191011ETI090007000.php

大人げないでは済まされない。
神戸市立東須磨小学校の20代男性教諭が、先輩の同僚教諭4人からいじめを受け、9月から欠勤している。加害教諭の2人は校内のいじめ対策担当だった。深刻な事態だ。
「いじめは駄目」と子どもたちを指導すべき先生の間で、なぜこんなことが起きるのか。市教委には、事実関係だけでなく背景も含めた全容解明を求めたい。
市教委によると、男性教諭へのいじめは昨年から始まった。「ボケ」「カス」と暴言を浴びせる、コピー用紙の芯で尻をたたく、女性教員に性的メッセージを送るよう強要する…。羽交い締めにして激辛カレーを無理やり食べさせる行為は、動画に残している。逃げ回る男性教諭を見て大声を上げて笑う様子は、たちの悪いいじめっ子と変わらない。
4人は、他に同僚3人にも暴言やセクハラ行為をしていた。「自分がおもしろければ良かった」などと話している。教員としての資質に欠けているのではないか。
学校としての対応はどうか。
昨年の段階で、複数の教職員が職員室で暴言を見聞きしながら、黙認していた。加害者たちは学校運営の中心的な存在で言い出しづらかったという。今年2月、見かねた同僚が前校長に「いじりの度が過ぎる」と報告したが、前校長は後任に引き継がなかった。
6月にも同僚から報告があり、男性教諭が尻をたたかれてみみず腫れができていることを、校長が把握している。市教委へは「教員間でトラブルがあった」としたが、詳細は伝えなかった。
市教委がいじめを確認したのは9月だ。それも男性教諭の家族からの訴えで分かった。前校長への報告から半年以上がたつ。校長は「隠すつもりは一切なかった」としているが、7月初旬に加害教諭を指導した後も市教委に報告していない。問題を放置してきたと言わざるを得ない。
小学校は、子どもたちが生き生きと学び、遊び、個性を育む場であるはずだ。それを支える先生たちにいじめがあることを子どもたちが知ったら、どう思うか。教育への影響は極めて大きい。
男性教諭は警察に被害届を出している。市教委は、有識者を交えて問題を検討し、再発防止を図る方針だ。なぜ問題は放置されたのか、教員一人一人が事なかれ主義に陥っていなかったか。人と人が尊重し合う教育現場を取り戻すのなら、そこに目を向けた検討と対策がなければ意味がない。