([県民投票「予定通り」) 局面打開へ全力挙げよ - 沖縄タイムス(2019年1月12日)

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辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票を巡って、県が窮地に追い込まれている。
これまでに宜野湾、宮古島、沖縄、石垣の4市長が、県民投票を実施しない方針を明言した。うるま市も、議会が予算案を否決したのを受け、態度を保留したままである。
4市に対しては、知事や副知事、市民団体などが再三、実施を要請しているが、翻意の可能性は低い。
玉城デニー知事と県議会与党は11日、急きょ対応を協議し、予定通り2月24日に条例に従って実施することを確認した。
極めて重大な判断だ。きちんと議論した上での、手続きを踏んだ結論なのだろうか。
すでに不参加を表明した4市とうるま市有権者数はあわせて36万3千人にのぼり、県全体の31・7%を占める。
4〜5市の不参加のまま県民投票を実施すれば、県民投票としての意味が薄れる。投票の結果、過半数が埋め立てに反対だったにしても、全国的には一部の「不参加」だけが強調されるだろう。
県民投票に賛成する県民の中からは、ここに来て条例の改正による実施時期の延期などさまざまな声が浮上し始めている。だが、玉城知事は条例の改正について「さまざまな課題があり難しい」と否定した。
このまま推移すれば県民のやる気が失せていくおそれがある。
県民投票の成功は一にも二にも、下から大きなうねりをつくり出すことができるかどうかにかかっている。

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分裂状態のまま投票を実施した場合、「こんな状態で投票しても意味がない」と棄権する人が増え、投票率が5割を割ることも考えられる。最悪の事態だ。
そうなった場合、県議会野党から知事の責任を問う声が浮上するだろう。
4月21日には衆院沖縄3区の補欠選挙、夏には参院選が控えている。
辺野古での土砂投入が進む一方で、二つの選挙が県民投票と複雑に絡み合っているため、条例改正による実施時期の延長も選択肢の見直しも、容易でないのは確かだ。
県議会で与野党がもう一度、腹を割って話し合い、その中から一致点を見いだすことはできないものか。
「県民投票は対立と分断を深める」という指摘があるが、知事が「結果に従う」ことを明言し、結果にかかわらず普天間飛行場の危険性除去に全力を尽くすことを約束すれば、県民投票はプラスに作用する。

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県は「県民投票条例の施行によって県及び市町村は県民投票に関する事務を執行する義務がある」として、不参加を表明した自治体に対し「是正の要求」を行うことも検討している。
ここで思い起こしたいのは、県民投票実現のため署名集めに奔走した若い人たちの熱意である。彼ら彼女たちは思い通りにいかない現状を深く憂慮しているはずだ。
県や県議会は、その思いに向き合い、あらゆる手を尽くして現状打開に努めてもらいたい。