沖縄の住民排除 警察への重い戒めだ- 東京新聞(2019年12月24日)

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沖縄の基地建設現場での機動隊員による反対派住民の排除は、適法性に疑問がある-。警視庁機動隊の派遣を巡る住民訴訟で、東京地裁が示した判断だ。警察は重い戒めとしなければならない。
訴訟の対象となったのは、沖縄県東村高江周辺での米軍ヘリパッド建設に伴い、二〇一六年七~十二月に行われた約百四十人の警視庁機動隊員の派遣。約百八十人の都民が、派遣期間中に支払われた隊員基本給約二億八千万円や特殊勤務手当の損害賠償を求めて一六年十二月に提訴し、今月十六日に判決が言い渡された。
損害賠償の請求は退けられたが、判決は、東京、大阪、神奈川、愛知など六都府県警から派遣された機動隊員の反対派住民らへの対応に言及。「職務行為が必ずしも全て適正だったとは言い難い」とし、特に一六年七月、住民らが建設現場出入り口に置いた車両やテントを強制撤去したことについて「適法性に看過しがたい疑問が残る」との見解を示した。
根拠法があいまいなまま警察権力が行使されたことに、強く警鐘を鳴らしたものだ。テント撤去以外にも現地では、沖縄平和運動センターの山城博治議長ら延べ十四人もの逮捕、建設車両への警察官同乗、県道の通行規制などが過剰警備として批判されていた。大阪府警隊員による住民への「土人」発言は、大きく波紋を広げた。
三年にわたる裁判で、警視庁側は、今後の警備に影響するなどとして派遣隊員の人数さえ明らかにしなかった。判決での厳しい指摘は、原告側の陳述や証言、沖縄県警幹部らへの証人尋問の積み重ねにより導き出されたといえよう。
沖縄で、座り込み住民らの強制排除は、辺野古の新基地建設現場などでも続いている。警察側は、司法の指摘を真摯(しんし)に受け止めて警備に当たるべきだ。法令順守は言うまでもなく、威圧的と受け取られないよう細心の注意を払うことが求められる。
原告側は、今回の訴訟の最大の争点を「国家が一部地域に国策を押しつけるため、警察権力によって住民らの抵抗を排除することが許されるか」に置いた。抗議活動は平和的に行われており、都府県の機動隊派遣自体が工事推進を目的とした違法なものと訴えたが、その主張は通らなかった。
原告は控訴する方針だ。愛知県でも来年三月、同趣旨の住民訴訟の判決がある。身近な都道府県警察の在り方を通して、沖縄の基地問題が問われている。